(画:毎日jpより)
先週11/3のこと
あの安藤忠雄氏が受賞された
「毎日jp」に掲載されたものを「後世に残す」
という意味で
ここに転記させていただこうとおもう
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ザ・特集:安藤忠雄さんが語る日本の「未来」と「幸福」
◇建築通し「人の心の中に光」 生きていること、実感できれば◇
建築家の安藤忠雄さん(69)が3日、文化勲章を受章した
「知らせをいただき緊張しましたが、これからがスタートという気持ちで頑張ろうと思います」
と話す安藤さん
高校を卒業後、独学で建築を学び
国内外で活躍
大胆な発想で「異端」とも呼ばれてきた
建築を通して「人の心の中に光を」と考えてきた安藤さんが
この国の「未来」と「幸福」について語った
【聞き手・山寺香氏】
◇◇受章の発表に「人が集い、住む場所を考えてずっと建築をやってきた
これからも同じ」とおっしゃっています
建築を通して見えてきた今の社会とは◇◇
1920年代のフランスの駐日大使で詩人のポール・クローデルは
「世界でどうしても生き残ってほしい民族をひとつ挙げるとしたら、それは日本人だ」
と言いましたが、今や世界で一番いらない民族になった
江戸から明治にかけて来日した外国人は、家族や地域の関係が良く
里山のような小さな自然を守り、質素だが美しく生きている日本民族を高く評価しました
今やきずなが崩壊し、親が子どもを殺したり子どもが親を殺したり
経済も社会も人の心も大変なことになり、既に限界を超えていると感じます
このままでは「昔、日本という国があったらしいね」と、あっという間に忘れ去られます
◇◇深刻ですね。◇◇
私が大阪に建築事務所を開いた1960年代は
64年の東京五輪と70年の大阪万博を目指し、みんなが希望を持って生きていた時代です
私も、建築を体験した人が好奇心を持ち
「何だか分からないけれど考える力や生きる力がわいてきた」と思える建築を作りたかった
人が心の中に光を見いだせるような建築物が集まり
それぞれがつながりを持つことによって、都市になる
そういうものを作ることで、建築家は建築を通して社会に存在を表明できるのではないか
と考えてきました
そう考えるようになったのは
10代の終わりから20代初めによく奈良や京都に出掛け、古い建物を見た体験からです
薬師寺の東塔や東大寺の南大門を見ながら
「あの時代に、よく想像力を持って作ったな」と感動し
自分ももっと面白いものを作ってやろうと思った
同様に、自分が作るものから
次世代が何かを感じ取ってくれたらいいと思ってきました
最近は「受け手」がいない
20年くらい前からそう感じています
都市とは、意欲と意欲が重なり合って響き合いながら存続していくものです
今の日本人には意欲がなく、意欲のない人が集まっても都市は成り立たない
一方、中国や韓国の人たちの中には意欲がある
自分の中に希望の光を作り出せない民族が存続するのは難しい
みんなが希望を持つには、日本は豊かになりすぎました。
80年代以降に生まれた人たちは、過保護にされ思考力は止まり
哲学がないまま成長したから不安がない
不安と夢や希望は表裏一体ですから、夢も希望もないのです。
◇◇夢や希望のもとになる「心の中の光」は、どのように作り出すのですか。◇◇
私にとっての幸福とは自分が生きていることを実感することです
私の仕事は大工さんや左官屋さんなど相手がいるから
その関係性の中で自分の存在をしっかり見つけ出せれば十分幸せです
都市では、一人では生きていけないということを自覚し
自分が社会にできることを一つでも見いだしていくことが光になると思う
一流企業や一流大学に行けなくても
社会が光だと思っている以外の所、闇の中にも十分光はあります
自分の心の中に光を見いだした方が早い
2008年に地下鉄副都心線ができた時、東京・渋谷に地下駅を作りました
「地宙船」と名付けたこの駅は
地下2階のコンコースから地下5階のホームまで楕円(だえん)形の吹き抜けで
地上から流れてくる風で自然換気・冷房ができる仕組みです
私のデビュー作「住吉の長屋」も実は同じ発想で
家の真ん中に中庭を作り、そこに入る自然の風を冷房にしました
暖房も無いから、寒かったらシャツを1枚多く着ればいい
そうすることで、生きていることを実感できるようにしたいと思ってきました
日本人は自然と共に生きてきた民族だから
そういう空間を作りたい
だから、私のほとんどの建築ではパブリックスペースに冷房がありません
快適性を追求する現代人には不便きわまりなく
評判はよくない
でも、自分の哲学としては自然と共生する都市とはそういうものです
便利さの中に心に残る空間はありません
作れば作るほど利用者の不満が残るかもしれないが
その不満が新しいことを考える力になると思います
豊かさとは形ではなく
自分の意識の中に作り上げていくものです
そうした心の中の光が響き合い、新しい世界が開かれると思っています
◇◇東京での「海の森プロジェクト」などの植樹による環境保護活動に積極的です。◇◇
海の森プロジェクトは
市民からの1000円募金で苗木を購入し、東京湾のゴミの埋め立て地を
森に再生しようという取り組みです
苗木1本は約500円だから、50万人分集まれば100万本買えます
3年前に始め、既に45万人分集まりました
募金をした人たちは、その森を「自分の森」だと思うでしょう
自分たちの生きている街は自分たちのものだと思わない限り
どんな規制をしてもよい街は作れません
私たちは、社会と共に生きているということをもっと意識しないといけません
建築と植樹は
環境に働きかけ、その場所に新しい価値をもたらすという点で共通します
こんな時代だからこそ、建築や社会活動を通して
「共に生きる」
ことをきっちりと表現したい
心の支えになる家族がいて、家があり、それが集まって地域ができる
神戸の人々が助け合いながら大震災をくぐり抜けられたのは
当時はまだ、地域に心の対話が
あったからでしょう
この「優秀な民族」が
世界に向けて何かを発信するところを
夢の中でもいい
もう一度見たいのです
◆◆人物略歴◆◆
◇あんどう・ただお◇
建築家。東京大学名誉教授。1941年大阪生まれ。
高校2年時にプロボクサーとしてデビュー。
卒業後に世界を放浪して独学で建築を学び、69年に安藤忠雄建築研究所を設立。
木造の長屋の間にコンクリートの箱をはめ込んだような
「住吉の長屋」(大阪)で注目を集め、以後数々の住宅や公共施設、美術館などを手掛ける。
自然と共にある建築を追求し、海外からも高い評価を受ける。
代表作に「光の教会」(大阪)、「フォートワース現代美術館」(米国)、
「地中美術館」(香川)、「表参道ヒルズ」(東京)
など多数。
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