2012-08-20

アルヴァ・アアルト ~アアルト邸とアトリエ~ ヘルシンキ 1936,1955

サヴォワ邸のオブジェのように美しい佇まいに比べると、アアルトの設計する建築の外観に、万人を惹き付けるような力はない
アアルトの設計した空間に身を置くとき、窓枠や家具に使われている素材や個々のディテールの形態を通して、そこに身を置く者の感覚に直接伝わってくる。アアルトの建築の最大の魅力があるとすれば、その外観は、自邸のバタフライ屋根のように、内部の空間が形づくられた結果として外に表れてきたものに過ぎないのかもしれない。「頼まれる仕事はいろいろだから、問題の解決は型にはまり得ない。私が示した例は個別的なもので、他に適用する場合はひとつの方法として妥当なだけである。本当に必要なのは統合なのに、分析のレベルを超えないものが建築にはたくさんある。分析と総合とをわけることほど危険なことはない。それは全く一緒のものである(レオナルド・モッソの本の序文よりアアルトの言葉、1967年)」。アアルトは、多くの雑誌や論文の中で、国際的に画一化していく近代建築の流れに警鐘を鳴らしていた。それは、機能主義の名のもとに、敷地や土地の固有性を離れ、人間の体験的な蓄積のない建築が、気候風土の異なる国や地域まで広まることを危惧していたからに違いない。おそらく人間の生活とは多様性そのものであり、日々の体験を建築に統合することなくして、豊かな建築はできないとアアルトは考えていたのだろう


(目次)

写真
アアルト邸
アトリエ

図面・スケッチ

風土と暮らしの多様性から豊かな建築へ
祖国に愛された建築家
測量技師の息子として生まれ
アアルトの自邸兼スタジオ
閉ざされた環境は人々を温かく包む
広さとプロポーションを見極める巧みさ
合理性に支えられた独自のスタイル
人の生活が中心にあるべき建築
アトリエ、そして日々の体験を建築に

照明、金物、家具


(参考)