2010-08-29

センソウノナカノキョウト


中西宏次氏の著作「戦争のなかの京都」だ
カバーになっている「写真」は
1945年4月13日
米軍が空撮した
京都の街で
上空を飛行
(コラージュ)
するのは
空爆用戦闘機「B29」



本書は「岩波ジュニア新書」シリーズの一書であり
著者・中西宏次氏も
『修学旅行で京都を訪問する中高生など若い人たちを念頭に置き...』
と記されている


しかしながら
『敗戦直後の大きな犠牲をはらいながらも
京都の伝統や文化が
廃れてしまうことなく
現在に受け継がれ、守られたということ』
を知るうえでは
わたしたちオトナも
一読するに値する「書」といえる


著者の生まれ育った「京都」でも悲惨な戦争の「爪痕」が
65年を経過した現在も残っていることを
本書は
はっきりと伝えているのである


また著者は「おわりに」で
こう記している


『私はこの本をつくる作業をもう少し早くはじめておけばよかった
と悔やんでいます
というのは、家屋疎開のことなどで聞き取りに行った先で
「おばあちゃんがよくそのことをはなしていたけど
つい先日
亡くなりました」
というような話を何度も聞いたからです
戦時中や敗戦直後の体験を直接お聞きするチャンスは
日一日と減っています
読者のみなさんも
身近に戦争体験をおもちのお年寄りがおられたら
ぜひ
積極的に
お話を聞く機会もってほしいと思います
戦争体験を継承し
その悲惨さを伝えていくことは
後世に生きる者の
責務の一つだと思うのです』


著者は
京都精華大学で「人文学」の教鞭をとられていて
「次代の青年教育」に力をいれておられる


「戦争を知らない世代」
であるわたしたちが
しっかりと
学び、つたえていくことが大切であるとおもった
************************************************************************************
(目次)

はじめに

1 戦争と京都
軍隊と京都/近代工業と京都/総動員演習/精練業界と総動員体制/企業合同

2 供出があった
戦局の悪化と物資の欠乏/金属供出/ボイラー供出/海南島/石原廣一郎と石原産業/
日窒による石碌鉄山開発/「海南原鉄」は実在した/徴用と犠牲/しゅんせつ船の徴用/
労務者の徴用/上海苦力と香港苦力/慰安婦のこと/海南島と京都/戦後の日窒/
戦後の石原産業/海南島へ

3 建築疎開がおこなわれた
ドゥーリットル空襲/京都の市街地形成/第一次建物疎開/第二次建物疎開/第三次建物疎開/
堀川下之町の消滅/堀川京極の滅亡/五条通の疎開/米軍撮影の航空写真/
舞鶴での建物疎開/第四次建物疎開

4 寺社と戦争
寺社の金属供出/文化財保護/戦時下の平安神宮

5 空襲があった
馬町空襲/西陣空襲/西陣空襲を記録する碑

6 戦後の暮らし
タケノコ生活/代燃自動車/兄たちの死/隔離病棟のこと/伝染病と京都

7 街並みの再建
疎開跡地の荒廃/五〇メートル道路への苦闘/戦災都市・京都

おわりに
[付録]京都の近現代史を学ぶ見学スポット/参考文献


(参考)
中西宏次氏プロフィール
京都精華大学人文マガジン
岩波ジュニア新書のすすめ