2012-11-19

建築雑誌 2012―11。

これからの都市「東京」の「ありかた」が問われています。
首都・東京の主題について

1.土地不動産を「流動化」し、「大小資本」の活動を刺激して
都市再編を推し進めるような『駆動力(諸制度)』。
その駆動力はいまどのくらい(東京には)あるのか?

2.破壊と再生、災害リスクとの闘い。
都市・東京の駆動力とそれらが描いた成長の軌跡は、
「巨大で特徴的なリスク」を生み出し、
分厚い歴史のなかに根ざすリスクとしてどう扱うのか?

3.開発フロンティアの「縮小」と、膨大・多様な「ストック」を
現在の社会構造やライフスタイルの変化に伴う「資産」としてみる動きがあり、
それらを今後の「首都・東京の駆動力」及び、
「ライフスケープ」の構想へとどのように転じることができるのか?

という「三つの問い」が、全体を通じて「都市」としての東京の存立への問いとなっています。
一極集中で招いた首都・東京の「リスク」と「ライフスケープ」。
そんな問いへ間接的には関連しないかもしれませんが、巻頭インタビューの
猪瀬直樹さんのコメントが印象的です。

◇◇◇◇◇
(首都直下の場合、従来の復興政策では立ち行かないのでは......の問いに対して)今あるものを前提にしなくちゃね。このあいだも、ソフトバンクの孫さんと夜中にやりとりしてたんだけど、地下鉄内でメールができないと駄目。暗闇で通信が途絶えたら恐怖ですよ。ドコモと一緒に東京メトロにお願いにあがったら、相手にしてくれなかった。3~4日で決めるスピードが必要。『作家の誕生』で三島由紀夫や太宰治について書いたのですが、情報インフラというかネットワークによって近代社会になり、国民国家という抽象的な空間、単一の大きな空間に生まれ変わる。新聞や雑誌や小説は、ひとつの空間だという認識から生まれた。これはネットと同じ。グーグルとかフェイスブックが自己認識の道具になっていけばいいんだが。実際、ツイッターがきっかけで、気仙沼公民館の屋上で孤立していた446人をヘリで救出することができた。行政の機能が途切れたときに、どういう情報ネットワークが動かせるか。会社の広報やホームページも普段から使えるようにしておかないと。意識、発想力、決断する力が大事。それと既得権益を打ち破る喧嘩の仕方を知らないとね。エビデンスファクト、事実と根拠を提示して話さないと。テレビのキャスターも、「......と思います」じゃ、駄目だよ。行政は、民間のように稼いでいるわけじゃない。民間が稼ぎやすくするためのサービスに徹する。行政は弱者対策、そして、高齢化社会対策。国交省が住宅、厚生労働省が福祉施設、そこで僕は壁を破って、特養に入る前の「ケア付き高齢者住宅」をつくった。東京モデルですね。すると、厚労省と国交省も「サービス付き高齢者向け住宅」をつくったの。石原知事の「認証保育所」もそう。霞ヶ関の縦割りは永遠になおらないし、統合する力は日本政府にない。認可保育所、認証保育所の例もそうだが、東京都が解決策を示し、霞ヶ関へ返す。そうした東京モデルをどれだけつくることができるかが、鍵ですね。
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(目次)
《以下、特集部分のみ掲載》
特集
トーキョー・アーバニズム
-駆動力、リスク、ライフスケープ
特集前言
東京は都市モデルたりえているのか
巻頭インタビュー
東京はどこから来て、どこへ向かっているのか
猪瀬直樹

第1部
「東京」をかたちづくってきた力
東京の土地・空間史年表
東京ライフスケープ
巨大開発の時代(1968-2011)の終焉と現代日本の新たな生命線
世界の都市総合ランキング(GPCI)に見る東京の国際競争力と災害リスク
第2部
蓄積されてきた「東京」の災害リスクとそのマネジメント
メガシティ東京の災害リスクと防災都市づくり
拠点建物の適切な機能維持の重要性とその対策
-リジリエントな都市・東京の実現に向けて
災害リスクと東京一極集中の国土形成
第3部
リスク都市「東京」で営まれるライフスケープの評価
座談会
東京のストックをどう評価し、どう暮らすのか?
対談
「東京」はアジアにおいていかなるプレゼンスを持っているか?
対談
東京のライフスケープは世界に対して、一体何を発信できるのか?

(参考)