2011-11-17

爆裂ツアー2011-02

九州縦断旅の二日目のはじまりです


◇◇◇ミズタホームさんの仕事◇◇◇


■熊本・近見(ちかみ)の家■
雑木林を模したアプローチ
深い軒下と縁
軒下には「簾掛(上)」と「布団干(下)」の用に備えた竹棒
庭面の高さに近い縁は夏の戸外生活を促す装置
室内にも風を感じることのできるシカケ
築3年という個人住宅
閑静な街並みにひっそりとあるその「すまい」は
むかしからそこにあったような
「佇まい」と「植生」をみることができました

■熊本・自然回帰の家びお■
ミズタホームさん社屋 全景
社屋横のビオトープ
戸外とつながる暮らし
然りげ無い建築のシカケ
北向のニワ
オフィスの入り口にはクリノキと可愛らしいポスト
ポストの上には鉄製オブジェ
オフィスも壁と開口の配置が秀逸
ミズタホームさんのオフィスとモデル(近い将来息子さんの住まいになるそうです)

みせていただきました

ひとこと

こんな「雑木林」のなかでシゴトができたら
ズッと「根」がはえてしまう(笑)、そのくらい「居心地の良い場所」となっていました

建築的なことを少々
水田さんのうまいところは「開口部」と「壁」そして「太陽の捉え方」
にあるとおもいました

然りげ無くそこを
「見せる(開く)」
ということにとても行き届いた設計が成されている
そう感じました

因み、水田さんは建築の教育というものを受けておらず
独学で現在の境地を開かれた
とういことですので
殊更、「驚愕」の思いを隠しきれません

そして
「哲学と愛情の融合」をもった水田さんのお仕事

「木のこと」「水のこと」「人のこと」

今後さらに拡がりのある世界へと発展していく、そんな予感を見ることができました



◇◇◇悠山想さんの仕事◇◇◇

■熊本・不知火 懐水集(かいすいしゅう)■
アプローチには手づくりの
まわりは自然の雑木林を擁するロケーション
庭にはかわいい小屋
なかはまるで千利休の茶室のよう
築90年の民家はカフェに
その民家の裏手には外風呂
民家の小屋裏には庭を見下ろせる書斎と休息の場があります
築90年の古民家を再生した
カフェと紙屋を営まれているおみせ

湧き水のせせらぎ
鳥のさえずり
梢のざわめく音
そして
縁から土間をつたって入る自然の風

そんな自然とつながる「ゆったりとしたとき」がながれる空間で
すこしはやい昼食をいただきました

昼食のことなどは「懐水集」さんのブログをご覧になってください

■熊本・宇城 松橋(まつばせ)の家■
付近は田園の風景がひろがっている
通りに面した生垣 季節の大風からすまいを守る
「松橋の家」のよこにある土間納屋 切石の基礎が見える
端正なアプローチ
北庭まで見通しのきく土間
畳の間と繋がるモダンな寝室
内法の低い開口部部分は土間として利用していた空間
軒下空間の深い縁より庭を見る
180年前の民家を
解体・再構築した個人住宅です

江戸時代から明治・昭和そして戦後大変動期の社会と暮らしの変化に
対応してきたこの「住空間」は、伝統構法を用いた建築のしくみと
それを再生する
「つくり手」と「住まい手」

協働があって誕生したものであるとおもいました

悠山想の宮本さんは
伝統とは同じことを繰り返すことではなく、つねに発展させていく責任がある
といわれるように
古民家のもつ
「機能の不都合さ」「寒さ」「暗さ」
を改善し
「思い出となる部分」を残しながらも、「快適性・デザイン性」
を考えられました

そして
「屋根の断熱と通気工法」
「開口部の断熱化(Low-e Pg、内障子)」
「床面の断熱化(30mmの厚板、根太間断熱補強、)
「壁の断熱化(内外とも土壁)」

温熱環境についての性能向上をはかるとともに
「福岡の土」「有明海の貝灰」「肥田杉の造作」
など
建築地に近い「材」によって建築をつくるということも実践されていました

■福岡・八女星野村 渡辺邸■
棚田の一部を利用した渡辺邸の全景
あの山荘を想起させるようなポスト
アプローチ横には手押しポンプ
太鼓張りとした障子 柔らかい光が畳間を包む
軒下には干し柿が竹棒に吊るされている
美しい平瓦のシルエットは山の稜線に溶け込んでいる
この建築の周辺はあの
「日本の棚田百選」
「日本の里山100選」

選ばれている福岡県八女(やめ)郡星野村

この住宅建築の敷地ももと「棚田」であったであろう場所に
立地しています

住まい手さんは背後にある棚田も「菜園」をするために
所有
されたといいます

屋根は「平瓦」で葺かれていて「棟通気工法」も施されているといいますから
驚きです
台風のときは、かなりの風雨に晒されるということから
屋根の下地には「ルーフィングを2枚張り」として
そのときに備えるよう建築的な工夫も成されています

ここの建築もあの「松橋の家」同様
一切「金具」を用いず組み立てられています

それは
現しとなっている「軒桁」や「持送りの梁」
そしてデッキの「手摺」など
随所に見ることができるのです

恐れ多いことをいいますが
「宮本さんのお仕事のまねはできない」
そうおもいました


さいごに、「九州縦断旅」をまわって思ったことをいくつか纏めておきたいと思います



ひとつ。

日本の気候風土が培ってきた「住まい方」「建築のつくりかた」を
地域の工務店が『整理・構築』しなおすこと

ふたつ。

「ああ、こういう拘りを大事にしてくれるんだな」ということ、を見てもらえるような仕事を
地域の工務店が『カタチ』にして見せること

みっつ。

毎日毎日の「鍛錬と研究」、そして「創意・工夫、実践」の積み重ねにより
地域の工務店の『厚み(独自の世界)』として拓くこと

よっつ。

木のちから(エネルギー)を信じて、森・里・海、そして自然と生活を美しくしていく
地域の工務店として『人と自然』とともに生きること

いつつ。

熊本を中心とするこのあたりは「火の国」といわれるくらいに、とにかくアツイ(笑)ところ
地域の工務店が『アツサ(熱意)』をもって実践すること



(参考)

木のえくぼ


水田さんの「文」にステキな暮らしの「写真」をちりばめた本が出版されます