2011-07-14

TOTOツウシン2011_summer

本号の特集記事は「壊さない意思と知恵」だ

「団地再生」
「町家再生」
「農家再生」
など
3例のケーススタディが紹介されています

1960年代から2010年という時間の経過のなかで
「高度経済成長→大量生産→生活様式の変化→経済変調」
そして
「解体」なのか
「再生」なのか
が問われています

ここでは「消費エネルギーの少ないストック再生」を焦点にして
具体的な事例が紹介されています


「団地再生」では
東京都東久留米市ひばりが丘団地の事例

◇住戸リニューアルと建て替えとの中間的なことを住棟単位でできないか
◇非常に多い、階段室型住棟での実験は波及効果が大きい
◇今回試した技術を部分的に使うことで異なる住環境をつくり出せる
◇さまざまなライフスタイルに対応できるストラクチャーをつくるのが第一
◇条件を逆手にとり効率優先ではできない住戸の可能性を考えたい
◇現実的にこのような改変が可能なのか 手法になりえるのか

などが座談会形式に浮き彫りにされています
改変された住棟は「3棟」
「低床化プラン」「2戸1」「メゾネット」「1.5層」「4戸1」
など
従来の試みも含まれてはいますが「ストック」するという観点からすると
「注目すべき手法」
あるとおもうのです
これらを裏付ける工法(技術)として
「PC鋼棒圧着工法」「既存スラブ撤去工法」「既存スラブ残置工法」
などが採用されています


「町家再生」では
大阪府貝塚の民家再生の事例

◇華奢(かしゃ)な軸組に自立する箱を挿入する
◇日常の場所として成立させる
◇既存の質は問わない

ユニークなのは「箱に地震力を負担させようとする”耐力箱構造”」
というもの


「農家再生」では
兵庫県淡路市の農家再生の事例
古い農家を手に入れるという具体的な変化の向こうにある新たな意義や価値
を見出そうというものです

◇その土地で暮らす新しい価値
◇減築で環境を間近に感じられるものへ
◇民家改修の標準事例としてのケーススタディ


現在
「福島第一原発事故」によるエネルギー資源の再検討が
さかんに論議されていますが
それとは別の視点として
「飽和状態の住宅状況」についての現状
考えていかなければならないと思っています


(おまけ)

アントニン・レーモンドの「軽井沢新スタジオ」
が紹介されています
あの藤森教授がこの「軽井沢新スタジオ」の核心ともいえる
文章を書かれていますのでご紹介しておきます。

モダニズム建築が否定した歴史主義建築の室内において
暖炉は日本の床の間と同じ装飾的役割を帯びていた
だから
モダニストたちは捨て去ったわけだが、でも、グロピウスも
ミースもコルビュジェも、暖炉は捨てても火まで否定することは
できなかったはずだ
自作のなかでは使わなくても否定できない火
20世紀のおおかたの建築家たちが否定も肯定もせず
自分の建築の外部の問題とした火を
レーモンドだけは建築の問題としてとらえ
さまざまに試み、そして、このスタジオをつくった
室内に入るまで、暖炉の印象が強すぎて、かえって空間がヘンなことに
なっているんじゃないか
心配していたが
無用
だった
火のゆらぎを見ていると、人間の住まいの原点たる火のある場所が
このくらいデカくてもヘンじゃないと思えてくる

吉村順三が「障子の可能性」をレーモンドに教えたエピソード
書かれています