座談会 東日本大震災×パッシブデザイン がおもしろい
小池一三氏
(町の工務店ネット代表)
(神戸芸術工科大学環境・建築デザイン学科教授)
武山倫 氏
(プレアデザイン研究所代表)
の三氏による
「ポスト3・11のエネルギーと家づくり」
では
東日本大震災の「前」と「後」でのエネルギーに対する考え方
そして
「当たり前」に使ってきたエネルギーを採用した
「家づくり」を根底から見つめ直す「新しい時代に入った」というものです
小玉祐一郎氏は
すべての原発をすぐに停止して、いますぐ自然エネルギーへの
100%切替えは不可能である、としながらも
住宅におけるエネルギー使用を
「ハイ・エネルギー」(電力などの高品質なエネルギー)
と
「ロー・エネルギー」(低密度の太陽や風などの自然エネルギー)
とに分けて使用することが重要であるといいます
現在の電力は、原発に頼った暮らし方や社会の仕組みが前提となっており
それは「ハイ・エネルギー」しかないと考えている(あるいは、そう思い込んでいる)
安価で潤沢なエネルギーが存在した
「20世紀の思考」の惰性にほかならないと指摘し
このハイ・エネルギーだけを対象として
「採算があうか?あわないか?」
や
「CO2がマイナスになるか?ならないか?」
といことには問題があるといいます
「ハイ・エネルギー」に依存した暮らし方を見直して、その消費を削減し
「ロー・エネルギー」を暖冷房・給湯に活用することが
これからの進むべき道であるといいます
また
「エクセルギー」というエネルギーの「質」に注目し、用途により
「エネルギーの使い分け」をするという発想が
今後のエネルギーを考える上で知っておくべきだ、といいます
私たちの暮らしに定着してしまった機械空調(暖冷房)や給湯に
必要な温度は「数十度のレベル」の電力で
これに「数百度・数千度」も出せる電力を使用するのは
もったいない
貴重な電力は、電力でしか対応できない「情報技術」や「コンピュータ」
などの用途に使うなど
これからの「(住まいの)省エネ」論議では
エネルギーの「量」とともに「質」がもっと考慮されるべきである、といいます
小池一三氏は
「阪神淡路大震災以前(第1期)」
「阪神淡路大震災以降(第2期)」
そして
「東日本大震災以降(第3期)」
とたて分けた住宅づくりへのアプローチが必要だ、といいます
住宅(とりわけ木造住宅)は第2期以降
「耐震性能が強化」された
そして
これを前後して、閉じられた室内で「過快適」ともいうべき状態を
エアコンのような機械設備に頼りきってつくられるようになった
小玉さんが長く説かれていた
「自然と交感・応答することで得られる楽しさを含めた快適さ」
を考える必要が生じていた
図らずして今回東日本大震災が起き
「第3期」に入っていくことになる
「過快適」に馴染んだ、暮らし方に依存している生活者に
「自然と交感・応答する」
と提案しても「きつい(=イヤダ)」と言われてしまう
「自然」と「過快適」の中道を考えるべき(「第三の道」)である、といいます
《3期にわける住宅の様相》
第1期 開放型の家=開く
第2期 気密型の家=閉じる
(設備依存密閉型)
第3期 1と2をバランスする家
そしてさらに「3・11以降のパッシブデザインのポイント」として
「夏対策」をあげています
「第2期」での省エネは「冬をどう快適に過ごすか?」
という実践に目がむけられていた
しかし
都市部の「夏をどう快適に過ごすか?」は未解決のままとなっている
これには
エアコンを運転して暮らす、「過快適」(第2期) だけでもなく
「自然」「開放」する暮らし方(第1期)でもない
「夏の過ごし方」が考えられた「建築」が考えられ提案されるべきである
といいます
そして現在の夏対策として
まだ「弱い」のは「屋根断熱・天井断熱」であり
それを「増強」することによる効果は大きい、と指摘しています
これに小玉氏も同感され
日本古来からの「衣替え」という生活習慣が重要、といいます
夏と冬で「気候・ライフスタイル」が
「ガラリと変わる」日本では
建物自体も衣替えする「しつらい・工夫」が必要で
北ヨーロッパのようなパッシブ基準を持ち込むのは「ナンセンス」
といいます
そして
建築物という人工物が周囲に与える「負荷」をどう削減するのか?
だけを考えるのでは不十分で
人工物と自然の新しい関係をどうつくるのか?
までを考える必要がある、といいます
それには
「住まい手」自ら「自然の変化に関心」をはらい
建築のモード(衣替え)切替えをする必要があり
いずれ
住むことへの楽しみに変わっていく、と提案しています
また
小池氏は「パッシブデザイン」を広めていくには
その「住まい方」をわかりやすく魅力的に伝え
「住まい方を変えるアクション」
をおこしていく必要がある
と指摘しています
そして
その仕事を担うのは
その地域の「気候・風土」を重ね合わせて提案すること
地域のつくり手であるといいます
武山倫氏は
パッシブデザインに取り組むにあたり
「まず、一戸をきちんとシミュレーションしながら」
取り組んでほしい、といいます
そしてそれを「あしがかり」とした自分の地域で
自社ならではの設計手法を掘り下げてほしい、と
これには「時間」と「手間」のかかる作業となるが
そのうちに「つくる楽しさ」が見えてくるはず
と結論づけています
「東日本大震災」から「原発震災」ともいえる
一連の状況を見ていて思っていたことは
これからの(地方もふくめた)まちづくりやエネルギーの供給は
「分散化」が必要だ、ということです
東京駅周辺は「夜の海風」を皇居へと吹き込ませて風の流れをつくり
「首都ヒートアイランドの低減」へ向け(都市計画的な)工事が進んでいます
人間が「利便性」を求めすぎ
「高密度化」した結果によるエネルギーへの考え方と暮らし方
そして
地方の犠牲のうえに成り立ってきた「原発」があって
今日の日本経済が成り立ってきた、と言っても過言ではないと思います
そして
いま「あたりまえ」に便利さを求めてきた「社会構造」や「生活」を
抜本的に見直し・変えていく時がきていることを
国家首謀者も、単に日本国民に強いるだけでなく
「自らが行動するべきとき」
であるとおもうのです