2012-05-19

ALL MEN ARE BROTHERS

1970年朝日新聞社より出版された
『抵抗するな・屈服するな』
を改題、再編集を加え、復刊した本です
序文では、哲学者でもあり、インド第2代大統領でもあった
「核問題」について、このように書いています


現代の核問題に関連して言うならば、人類は、世界を破滅から救いたいのであれば、非暴力の原理(生活のあらゆる面での公正、又は憎む人を愛すること)を採用しなければならない。「広島が原子爆弾で全滅したと最初に聞いた時、私は微動だにしなかった。それどころか、『世界が今、非暴力を受け入れなければ、人類はきっと自滅することになる』、とつぶやいたのだった」科学がもたらした新しい情勢に自らを適応させることができずに苦境に立つ現在非暴力・真理・協調という原則を採用することは容易ならざることではあるが、それを口実にして努力を止めてはならない。政治指導者らの頑迷さはわれわれの心に恐怖心を抱かせるが、他方、民衆の良識と良心は希望を抱かせてくれるのである。


この序文は、いまから「54年前」の1958年8月15日ニューデリーで書かれたものです
どこか現在と通じ合えるところが見いだせそうな「言葉」です

また、『民主主義と民衆』の章に、「政権」のあり方についての言葉があります


私にとっては、政権とは目標ではなく、われわれに生活のあらゆる面の条件を改善することができるようにする手段のひとつに過ぎない。政権は国民の代表を介して国民生活を調整する能力のことである。国民生活が自然に調整されるほど完全なものになれば、代議制度は全くいらなくなる。そうなれば、それは啓発された無秩序国家となり、各人が自らの統治者となり、隣人の邪魔にならぬように自分自身を治めることになる。したがって、この理想状態においては、国家は存在しないのであるのだから、政権も存在しない。しかし、この理想は生活のなかでは完全に実現されないので、もっとも少なく支配するのが最高の政府だという、ソローの古典的な定説が出てくることになる。


そして、物にかこまれ、溢れる情報化社会に生きる私たちへの「警告」といえるような言葉が
『潤沢の中の貧困』の章に、あります


私は、人間は見方によれば盗人ではないか、と思う。かりに、私が自分には今すぐ入用でないものを手に入れて手放さずにいるとすると、私はだれからか盗んだことになる。私はあえて言うのだが、自然は日ごとにわれわれの必要なものをつくり出す。そして、だれも自分に必要な分以上取らなければ、この世に貧窮はないはずであり、餓死者もひとりもいないはずである。これが例外のない、自然の法則だ。しかし、この不平等を保持する限り、われわれは盗みを働いているのだ。私は社会主義者でもないし、財産を持っている人たちから取り上げたいとも思わない。だがこれだけは言っておきたい。すなわち、闇の中に明かりを見出そうとする人たちは、個人的にはこの規則に従うべきである、ということだ。私はだれからも奪おうと思わない。もしそうすることがあれば、私はアヒンサーの定めに違反することになるだろう。私は、他人が私以上に所有するのは構わないが、自分自身の生活を規制する限りにおいては、欲しくないものは所有しようとしない、と明言しておく。インドでは三億の人が「一日一食」で満足しなければならない。その一度の食事も脂肪分のない「チャパーティー」と「一つまみの塩」なのだ。これら三億の人の衣食が改善されるまでは、あなたにも私にも、現在われわれが所有している、いかなる物に対する権利もないのだ。世間の人より分別のわれわれは自分の欲望を抑制し、その人たちがいたわりを受け、食物や衣類を与えられるように、自発的に欠乏に耐えねばならない。


いまから87年前
ヤング・インディアン」紙(1919-1932 ガンディーの思想をわかりやすく掲載していた雑誌)の
1925年10月22日付けに掲載された
『七つの社会的罪(Seven Social Sins)』を、最後に記しておきます

1.理念なき政治
Politics without Principles

2.労働なき富
Wealth without Work

3.良心なき快楽
Pleasure without Conscience

4.人格なき学識
Knowledge without Character

5.道徳なき商業
Commerce without Morality

6.人間性なき科学
Science without Humanity

7.献身なき信仰
Worship without Sacrifice


この『七つの社会的罪』は、「ガンディー慰霊碑」にも刻まれているということです



(目次)

S・ラーダークリシュナン

第1章
自伝

第2章
宗教と心理

第3章
アヒンサー ―非暴力への道―

第4章
自己修養

第5章
国際平和

第6章
潤沢の中の貧困

第7章
民主主義と民衆

第8章
教育

第9章
雑録

出典一覧

ガンディー年譜

七つの社会的罪



(参考)