2012-04-20

民俗のふるさと。

宮本常一生誕105年(1907/08/01)の本年
初文庫化となりました「宮本民俗学」の一書です
日本の民衆はもと一般に非常に貧しかった
しかし貧しいにもかかわらず、それをそれほど苦にしなかった
村の人たちの協同によって
いざというときには支えてくれるものがあったからで
その協同の力を生み出していったのが
いろいろの慣習であった
慣習は法律でつくられたものではなく
人が共同して生きていくために、自然的に考えだした人間の知恵であり
しかもそれを持ちつたえて来たものであった
そうした慣習や行事は、時にはたいへん大切にされることが
あるかと思うと、時にはお粗末にされ
またこれを消してしまおうとする努力の払われることもあるが
生活の中にしみこんでいるものとして
日常のなんでもない行為や物の考え方の中に
生きていることが多い
それが時にはわれわれの生活文化を守り
発展させるためのエネルギーにもなる
ほんとの生産的なエネルギーというものは命令されて出て来るものではない
「民俗のふるさと」というのは民俗を保持伝承して来た世界という意味に
とっていただきたい
民俗というものはどういう社会に保持されて来たかということを
考えてみたかったのである

ここには
日本津々浦々をめぐり宮本常一が見聞きしてきた
「民俗」
なまなましく描かれているのです


(目次)

第1章 都会の中の田舎
1 東京の田舎者
お国はどちら/言葉はふるさとの手形
2 ふるさとの殻
生国意識/人国記ばやり/東京の人
3 盆がえり・正月がえり
五島の盆・下北の盆/ヤブ入りと鍋借り/旧暦から新暦
4 県人会
東京へ住みつく人/学寮/県人会/郷人会
5 地元の者と他所者
東京のなかの村/ベッドタウン発生/月見のモラル
6 市民意識の発生
古い町の秩序/町の自治
7 市民の祭り
祭りとお城/祇園祭り/堺の夜市/長崎の祭り

第2章 町づくり
1 町の芽
山の中の町/商人の役目/賃貸し屋あれこれ
2 商人町のおこり
乞食の世界/落伍者の群/落伍者が商人になった
3 都城づくり
都は物のあつまるところ/都の人あつめ/河原者
4 城下町づくり
武士の好む町/江戸の町/城下町の住民/商人の出身地
5 宿場町
荷物輸送/旅人と荷継ぎ/駄賃付け/陸の港
6 港町
船着場/港々に女あり/港町の性格
7 門前町
伊勢の御師の町/町衆の合議制/檀那場と門前町
8 町のしくみ
同業相集う/職業の変遷/株仲間

第3章 村と村
1 ムラの成りたち
条里制とムラ/垣内のムラ/名田のムラ/親方のいないムラ
2 ムラの格式
ムラの格式/ムラとムラの争い/ムラの格式の上下
3 賤民のムラ
死穢の思想/念仏聖/さげすまれる職業
4 僻地の村
僻地に住む人の劣等感/都会人の優越感/馬鹿村話
5 境争い
境界不明/入会地/飛地の整理
6 血のつながりと村連合
嫁をやりとりする村/見知らぬ在所へ嫁にいく/通婚と村連合
7 村の窓をひらく
神社中心の村連合/寺中心の村連合/村と村をつなぐ信仰集団/共通感情をもとめて

第4章 村の生活
1 人は群れて住む
一戸だけの島/外敵を防ぐために/散って住む場合
2 村落共同体
共同作業/休み/共同体くずれる
3 親方子方の村
親方の家/子方の独立/人口減少
4 村の結束ゆるむ
産児制限の意味/二、三男の行くえ/分家
5 村八分
権利の主張/村ハチブの流行/村ハチブの効果
6 村結合から人の結合へ
いろいろの講/親方どり/共感と結合

第5章 村から町へ
1 群れの絆
世間体/ムラの生活の拘束/立身出世/故郷はついてまわる
2 群からはなれる
親村・枝村/政治の外へ/出稼ぎ・離村
3 古いものと新しいものの場
古い秩序の意義/日本の都市/都市人口と農村人口
4 古い民族と新しい生活 
農村の解体/古さと新しさ/農村国家の近代化

あとがき

解説

宮本常一略年譜


(参考)