2012-04-09

東京のひと。

その「ひと」はいま、ここにいます
その「ひと」の住む家の庭には、主人の帰りを待ち侘びるように
春の草花たちが花をつけ始めています
白や紫、そして桃色の花が庭のあちこちで咲き始めています
この草花たちはその「ひと」が丹精込めて
育てていたものなのです
その「ひと」は
不治の病に罹り、富士山を遠くに望むこの部屋から
療養・回復にむけて日々、闘っています
その「ひと」の住む近所では、大きな桜の木が満開に
花をつけ、大空へ繋がろうと咲きほこっています
その「ひと」が五十数年暮らした
「まちの役場」は
その機能を終え、いまにも解体されようとしています
ボクは、その「ひと」のところへ「カモノハシ」にのって
4時間余りのあいだ揺られ、通います
その中継点となる「ステーション」はいま
「保存・復元」のさなかです
そして、あの東日本大震災では保管されていた
屋根用のスレートが津波被害に遭遇しました
宮城県石巻の「天然スレート45,000枚」のうち、塩害の恐れのないものが
使用されることとなって工事が進められています
「解体されるもの」と「保存・再生されるもの」
なんだか
その「ひと」の状態に酷似するように思えてなりません
ボクのすむ「マチ」でも桜が満開になりました
あの「ひと」が住むマチも、ボクが住んでいるマチも
桜が満開となっています
ひとつの心残りは
あの「ひと」にこの桜を見せてあげることができなかった
ことです

(参考)

東京新聞(TOKYO Web)

赤レンガの東京駅を愛する市民の会