雪深い山里に、根付いた「焔硝生産」とその「循環型社会」がここにあります
「焔硝」
「蚕の糞」と「人尿」はその大切な原料資源となっていました
自然科学が
「体系化」あるいは「分析技術」としても
存在しなかった時代に、この
「白川村」
という場所で生産する
「術」
人々の暮らしのなかに伝承されてきた「産業」として存在していた
ということがこの「本」を読むとよくわかります
本書では、白川村の人々の生活について
『すべてのモノをトコトン利用する高度な技術は
惜しみない労働に
自然やモノに対する鋭い観察力・洞察力があって成り立っていたもの』
であると記しています
「焔硝」はもともと
1543年種子島に鉄砲が伝来して以来、「戦(いくさ)の用」として用いられて来たものですが
この村では
豊かな「耕作土」をつくるためのものであったり「花火」などへの利用など、平和利用のための
「循環産業物」として村のくらしをささえていました
そして
本書の結びには、このように書かれています
『江戸時代の白川村は、現代の日本ほどではありませんが、食べ物を村外に依存する
食生活でした。しかし、流入した食べ物中の「チッ素」は、人の「労働力」と
木材の「燃焼」による熱という再生可能なエネルギーのみを使って
焔硝という有用物に変え、村外に還流していました
このような江戸時代のシステムを見直すことは、現代社会の環境問題・エネルギー問題を考える
手がかりを与えてくれるのではないでしょうか』
※焔硝=人尿中の尿素、蚕糞中の尿酸、ヒエの茎・葉や山草のタンパク質などを原料とする。
これに良質の畑土を加え、「焔硝土」をつくっていた
詳しくは『五ヶ山焔硝出来之次第書上申帳』に書かれています
(目次)
はじめに
1 白川郷とは?
2 床下でつくられていた火薬原料(焔硝)
1 焔硝の歴史
2 古文書からさぐる焔硝づくりの知恵
3 床下の土は語る
1 焔硝づくりを解明する
2 火薬原料(焔硝)はこうしてつくられた
4 焔硝生産と白川村のくらし
1 焔硝がつくる経済
2 白川村の人々は何を食べていた?
5 焔硝生産とリサイクル文明
1 焔硝生産は究極のリサイクル産業
2 チッ素の再生利用システムとしての焔硝
3 焔硝生産からみた現代文明
参考書
【特別寄稿】
和田家と焔硝生産
1 国重文和田家住宅の概要
2 和田家文書から焔硝製造をさぐる
3 和田家焔硝蔵跡と便所小屋の秘密
4 民俗館としての和田家の役割
【エッセイ】
消えた合掌の郷「加須良(かずら)」を再訪して
白川郷ミステリーに誘われて
【column】
① 硝酸イオンについて
② 藍づくりと焔硝
③ 焔硝の用途
④ 「コバシイ」とはどんな味か?
⑤ トチとナラ(ドングリ)
⑥ 魚と肉
⑦ 加須良 中野義盛家―43年の時を経て
(参照)