2012-05-09

宇宙から学ぶ。

「この一歩は、一人の人間にとっては小さな一歩だ。しかし、人類にとっては大いなる一歩だ」
これは
1969年7月20日
アポロ11号にのって、月面着陸に成功した
ニール・アームストロング船長
月に人類初、月に降り立ったときの第一声です

アームストロング船長はアメリカ人でありながら
「人類」
といったのはなぜか
「アメリカ」という一国の価値観を超えてより普遍的な価値観がこのとき
アームストロング船長の感覚のなかに生まれて
「人類にとって.....」
という発言になった、と毛利さんはいいます

それは
毛利衛さんご自身の宇宙飛行士として体験したなかで
「ユニバソロジ(Universology)」という
「すべての現象に共通な概念を含む、ものの見方」
という概念(または言葉)を
生んだ
ことからもいえるのではないのか、とおもいます

この
「ユニバソロジ」
という概念のなかで3つの視点があるといいます
それは
「ズームイン」「ズームアウト」そして「つながり」の視点です
これは「生命をつなぐ」「時間をつなぐ」「空間をつなぐ」
というもののなかに
「生きる」
という本質が見えてきます
それを
システム的な図解で示されたものが以下のようなものです
人はまず「挑戦」をしようとします
そしていろいろな事象に対応しようと、その手法も「多様化」していきます
環境は常に変化し、いろいろな創意工夫にも迫られることでしょう
会社組織であれば、社員やその家族の生活を考え行動し
家族であれば、妻子・親などの暮らしをまず優先することでしょう
この生命の働きは「種の保存・繁栄」を無意識のうちに
行動へと移しているものなのです
このサイクルを繰り返しながら人間は
日々の生活・生産活動を営んでいるのです
毛利さんはこの平面的なシステムサイクルに「時間軸」というものを
「縦軸」
設定することによって
「らせん状」
の渦巻きになることを説明しています
そして
この「らせん状」のサイクルは時間・経験の蓄積によって
大きくひろがっていくのです
ここで大切なことは
「継続していくこと」
ということです
スペースシャトルはわずか「90分」で地球を一周するそうです
シャトルの乗務員は、ともすると自分たちが
さもその「科学技術力」で地球を征服したかのような錯覚に陥るというような
感覚になるそうです
しかし、その感覚も四六億年の歴史をもった地球という惑星を
眺めているうちに
「自分が地球にいようといまいと関係なく、地球はこれからも、あるがままに存在しつづけること」
に気付かされ、「謙虚な気持ち」へと変化していくというのです
毛利さんはこのことを
「自然への気づき」
いいます

では
その「らせん状」に拡大していくシステムのつながりとはなにか
それをあらわしているのが、下図になります
毛利さんがいうところの
「つながりの逆三角形」
です
「個人を維持するつながり」
「人間の文化的なつながり」
「生命の普遍的な流れにもとづくつながり」
毛利さんは
これからの人類は、みずから自分の中にこの「三つのつながり」を取り込みながら
生きていくことが必要であるといいます
そして
『人類の存続のために、あえて人類の持続発展という発想を捨て
もっと広くより深い「地球生命」の視点から物事を見て、考える
それが、現在の危機を乗り越え、人類が生き延びるための
次なる智恵(文化)をもたらすのではないか』

いいます

先進国の人たち、なかでも都市に暮らす人たちにとっての「快適な生活」とはなにか?
実体感をともないながらも、決して自分という存在を侵さない
そういった自分という個人の
「意識を心地よく」
してくれる環境をいうのではないでしょうか
毛利さんはこの状態を、まるで
『火星に移住するための訓練を毎日しているのではないか?』

表現しています
そして、いま私たち人類がやらなければならないことを毛利さんは最後に
こう纏め、本書を結ばれています

『いま日本に求められているのは、従来の価値観、経済成長をはじめとする
一国中心の考え方から卒業して、まずは「人類」という視点に立つことです
そのうえでさらに
人類という枠組みをも超えて「地球生命」という視点にスケールアップすることです
そして、その視点からすべてを見て、組み立て直す必要性を
世界の人びとに向けて発信することだと思います
世界の人から見て「自分たちもそういう国でありたい」と思われる国
言い換えると、人類の新しい価値観を生み出し
世界に示せる国であることを目指すべきではないかと思うのです
それが結果として
経済的な発展にもつながる。私はそう考えます。』


(目次)

プロローグ

第一章
ユニバソロジへの招待
1 ユニバソロジとはなにか
2 ユニバソロジの見方
3 二つの普遍性
4 生命のつながり

第二章
生き延びるということ
1 意志の力
2 NASAで学んだこと

第三章
生命をつなぐ
1 つながりのモデル
2 個の行動のつながり

第四章
自然への気づき
1 つながりを生きる
2 総合智へ、そして未来智へ

エピローグ


(参考)

毛利衛 Wikipedia

NASA

岩波新書