2012-09-02

凹凸を楽しむ 東京「スリバチ」地形散歩。

わき道に逸れてみたら、そこは「スリバチ」でした
edo スリバチ
通い慣れた表通りから「チョット」裏通りへ
平坦な表通りから想像もつかいない
「スリバチ状の窪地」
それは
「下(お)りては上(のぼ)る」
向かい合う坂(=「谷」)
「懐かしい静寂に包まれた路地」
「崖で行き止まりになった袋小路」
「谷地を見下ろす高層ビル」と「木造密集地」
「丘に上ると息をのむような谷の町を見渡せる絶景」
そんな場所(地形)が
東京都心部「山の手」にはたくさんあります
「江戸の町を下敷き」にしてつくられた「東京(の町)」

「主要な道路」
「敷地割り」
「寺院や神社の位置」
などかわらない
江戸の町は、地形の特徴を最大限に活かしながら
その
「歴史」や「文化」
育んできました

それは
「丘の突端」や「微高地」であったり
「鎮守の森」であったり
「現代の町においても
「侵されることのない聖域」
として存在していて
「ハレの日」のお参りや「縁日」といったような
行事・遊びの場所としてだけでなく
そこに棲む人々がみな知っている
「ともに認識している場所」
として使われてきました

それは
住み分けられることによってその地形色を現して
「山の手の台地=武家・大名屋敷(現:学校・病院・大使館・官舎)」
「山の手の窪地=水田・町人地・組屋敷(現:住宅・商業地)」
「下町低地=町人他(現:住宅・商業地)」
というようになっていきました

そしていまもなお「裏通り」に面した
人知れず存在し続ける「谷地」や「窪地」を探し巡ることは
「砂漠のオアシス」や「樹海の泉」
を発見するような喜びを私たちに与えてくれることを
この本は教えてくれています
また
「どんな小さな町の窪みも、きっと大海原へと続いている」
という浪漫も
その地形から窺い知ることができるのです
それは
私たちの「目」と「足」を使って回ることによりその
「スガタ」
見せてくれるのです
tokyo スリバチ

(目次)

はじめに

東京広域MAP

本書の見方

Ⅰ 「スリバチ」とはなにか ~スリバチ概論~
1 東京は谷の町
すべての坂はスリバチに通ず/東京にも7つの丘がある/冷え性の母なる地球/「谷戸」と呼ばれるスリバチ地形/下町低地の微地形/埋没した谷
2 見えがくれする谷
スリバチコードで探す谷/地図に刻印された谷/窪む街角、地上を走る地下鉄
3 スリバチの法則と類型
地形と土地利用の関係/坂の上の集合住宅/スリバチの第一法則と第二法則/法則性はどのように生まれたのか/スリバチの3類型(公園系・下町系・再開発系)/スリバチの等級
4 スリバチの楽しみ方
東京の魅力は谷にあり/スリバチの空は広い/水の歌を聴け/下を向いて歩こう

Ⅱ 「スリバチ」を歩く ~断面的なまちあるきのすすめ~
都心にひそむ谷
① スリバチが守る町[六本木]
(日下窪・竜土町の窪地・乃木坂の窪地・我善坊・丹波谷・狸穴坂の窪地)
② 谷あっての丘[麻布・白金]
(がま池下の窪地・長玄寺下の窪地・竹ヶ谷・有栖川宮記念公園の谷・白金三光町支流の窪地と悪水溜の窪地)
③ 4つの谷を探せ[四谷]
(鮫河橋谷・若葉公園の窪地と若三の窪地・千日谷・荒木町の窪地・暗闇坂の谷)
④ 坂の下の路地[本郷]
(菊坂の谷・清水橋下の谷・鶏声ヶ窪・指ヶ谷・長方形の窪地・三四郎池の窪地)
⑤ 谷のターミナル[渋谷]
(黒鍬谷・渋谷川と宇田川・鍋島松濤公園の窪地・神泉谷・深町の窪地・鶯谷)
スリバチコードで巡る谷
⑥ 東京遺産が並ぶ谷[雑司が谷]
(弦巻川の谷・水窪川の谷・音羽の谷・神田川の非対称谷・沈む川神田川)
⑦ 丘の上の谷[碑文谷]
(立会川の谷・羅漢寺川の谷と目黒不動尊・林試の森公園の谷・六畝川の谷)
⑧ 谷と谷の出会い[世田谷]
(北沢川の谷・溝ヶ谷・川の出会う地 池尻の谷・烏山川の谷・空川の谷・一二郎池の窪地)
⑨ 谷をわたる土手[幡ヶ谷・笹塚]
(出羽様の池の窪地・旗洗池跡の窪地・地蔵窪・丘の先のスリバチ)
⑩ 偉大な窪み[大久保]
(スリバチテーマパーク・歌舞伎町の窪地・早稲田の窪地)
住宅地の知られざる谷
⑪ 町をデザインした谷[田園調布]
(宝来公園の谷・田園コロシアム跡の窪地・大田区立田園調布せせらぎ公園の窪地)
⑫ 巨大スリバチ団地[赤羽]
(八幡谷の窪地・赤羽自然観察公園の窪地・大恩寺裏の窪地・稲付谷・)
⑬ 台地の北・夕陽の西[成増]
(百々向川の窪地・成増駅北の窪地・小治兵衛窪・こいど川の谷・赤塚川の谷・清涼川の谷)
埋もれた谷
⑭ 江戸を造った谷[日比谷]
(千鳥ヶ淵の谷・御厩谷と樹木谷・桜田濠の谷・日比谷の入江・将門の首塚)
⑮ 下町低地の微地形を巡る[日本橋]
(堀留の窪み・浜町川・龍閑川の川跡・旧お玉ヶ池の窪み・人工の大地)

[ コラム ]
絵画で楽しむ、東京の地形 浦島茂世
スリバチの地下で見つけたかつての川 三土たつお
暗渠・川跡から見る東京 本田創
GPSがこすり出す微地形 石川初
東京のスリバチと階段 松本泰生
低地の微かな丘―新橋・烏森神社周辺 佐藤俊樹

おわりに「書を捨て谷に出よう」

主要参考文献

この本に収録されている「スリバチ」

(参考)