2012-10-23

自分で耐震診断ができる本。木造住宅編。

エントリーが遅くなっていましたが、いま身近で起きている
「スクラップ・アンド・ビルド」
見るにつけ、考えるところがあり再読しています。
著者、保坂貴司さんの文を抜粋しておきます。
「耐震診断」と聞くと、なんだか難解で素人には手の出せないような「モノ」であると感じますが、この本を読むとそのイントロダクション的な部分については、誰にでもできることがわかります。そして、技術的な部分は専門家に任せればイイのではないか、と理解することができます。それはちょうど、自分の「身体(からだ)」を日常的に健康管理するようなものです。そして、その状態を「確認」する、ということ、そんなことが、保坂さんの文章には書かれています。

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これまで(日本の)木造住宅の耐震診断は、設計事務所や工務店などで行わてきました。診断方法は日本建築防災協会の『一般診断法』によります。しかし、今回本書が目的としているのは、設計者や業者の方が行う耐震診断法ではなく、《あなた自身がやってみる「わが家の耐震診断」》です。現在、行政も補助金などを支給して住宅の耐震診断を実施しているところもありますが、決してうまくいっているとはいえません。その理由は、第一に設計者・業者の知識不足、第二に耐震診断が無料でできるなら、一応やってもらおうか、というような、ユーザーの安易な考えによる認識不足です。地震国である日本では、この百年以内に死者百名を越す地震が十三回、七年に一度の割で発生しています。防災対策を進めてゆく上で、木造住宅の耐震性の向上は欠かすことができないのです。不適格な木造住宅というと、今までは新耐震基準に改正された昭和56年以前の住宅に限られてきました。しかし、より一層の防災を図るためには、昭和56以後の木造住宅、また違反のある木造住宅にも耐震診断を広げる必要があります。事実として、木造住宅の50%以上は何らかの違反があるといわれ、その違反のある木造住宅に耐震性・防火上などの問題が多いからです。そのため耐震性のチェックは避けて通ることができないでのです。それこそ官民が一体となって取り組まなければなりません。現在、日本は地震の活動期に入っています。マグニチュード6・9程度の地震は、いつ、日本のどこで起こってもおかしくないといわれるほど、緊迫しています。このような状況を考えると、まず、あなた自身が「わが家の耐震性」を調べ、安心して住むことができる住宅であるかどうか認識し、問題がありそうなら専門家に相談していただきたいのです。この「わが家の耐震テスト」を書くにあたって、いかに耐震診断法を分かりやすく説明するか、頭を痛めました。なぜなら、正確に書こうとすると、どうしても専門的になりがちだからです。結局、パズルでもやるようなつもりでできる耐震診断が一番いいと考えましたが、残念ながら、そこまでには至らなかったと思います。今回の耐震診断法ではそれぞれの項目の評価点を合計して、最終的な判断をしています。私達は子どもの頃から、試験を100点満点の何点という採点方式に親しんできたこともあって、この方式をとりました。これを機会に、ご自分の住宅をぜひ一度見直してみてください。現在、木造住宅の専門と思われる技術者は大変少なくなっていて、いろいろ質問をしても正確な答えはなかなか得られないのです。また、地方の方から、よい工務店を紹介してほしい、といったご相談を受けることもあります。たいへん不本意ですが、なかなかご要望に応じられないのが実情ですとりあえず、まず、あなたご自身で、ご自分の住まいを耐震診断してみてください。その上で、耐震補強、改修工事について、何かご質問なり、疑問なりをお持ちになったときには、『既存建物耐震補強研究会(下記参考、リンク先)』にお気軽にご一報ください。できるだけご要望に応えられるよう努力させていただきます。今回の原稿が書き終わったところ(2011年3月)で、大変な巨大地震が起きてしまいました。確かに宮城県沖地震は、もっとも地震の発生確率が高い地域だと思っていましたが、地震の規模はM7・5程度と考えられていました。しかし、今回の地震規模はM9・0(神戸の震災の約760倍)という、日本において過去最大の巨大地震となってしまいました。原子力発電所の事故、予想をはるかに超える津波による被害を生じてしまいました。おそらく、これから私たちが考えている以上の被害が進んでいくように思います。私たちが行わなければならないことは、自分たちができることを実行し、皆が一致協力して、この未曾有の大災害に立ち向かうことではないかと思います。この書籍が書店に並ぶころには、被災地の救援が進み、復興計画が順調に運んでいることを切に願っています。
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図録・写真なども豊富でわかりやすい、
2011年3月30日初版の本です。


(目次)

まえがき
耐震診断
01 まず築年数と耐用年数
02 昭和56年以前の住宅かどうか
03 水の被害・台風・大地震の経験は
04 隣地との高低差も関係が
05 地盤に液状化の恐れがある場合も
06 住宅の揺れ方は
07 住宅の高さと開口の関係に注意
08 基礎にクラックがあるか
09 壁の多い住宅は地震に強い
10 壁の少ない住宅は弱い
11 平面が細長い住宅の強さは
12 平面の形状が複雑な場合は
13 二階の壁下の一階に壁がなかったら
14 下屋のつき方にも関係が
15 大きな部屋がある住宅は
16 大きな吹抜けがある場合は
17 改築のときに柱を抜いたか
18 建具に問題があることも
19 床が下がっているところがあるか
20 住宅のメンテナンスについて
21 屋根が重い住宅はどうか
22 外壁の劣化にも気を配る
23 屋根の劣化・雨漏りにも注意
24 二階部分を増築した場合は
25 増改築を繰り返したときには
わが家の耐震チェック表
知っておくと役立つ知識
資料① 震度とマグニチュード
資料② 家具と地震
資料③ 倒れやすい家具、倒れにくい家具
資料④ 震度階と加速度
あとがき


(参考)