2012-10-10

牧野富太郎の本。其の参。


時とすると自分はあるいは、草木の精ではないかと疑うほどです。
生まれながらにして草木が好きであった。
五、六歳時分から草木を相手に游ぶのが一番楽しかった。
私の宅では両親はもとより誰一人として草木の好きな人はなかった。
ただ私一人が生まれつき自然にそれが好きであった。
両親が早く亡くなり、むつかしく言って私に干渉する人がなかったので、
私は自由自在の思う通りに植物学を独習しつづけて、
ついに今日に及んでいるのです。

「植物記」に続く最晩年の随筆集です。牧野富太郎が植物をもってして世に問う「スケールの大きな提案」がなされていたり、富太郎自身の「興味深い知識が散りばめられている講演録」、そして生涯の生き方を通しての「人生観」や「研究生活」などが綴られています。1862年5月22日に高知県佐川町に生まれ、小学校を中途までしか修めていないにもかかわらず、自然のなかで遊び植物が大好きであった富太郎少年は独学でそれらを学なび、1957年1月18日に94歳で亡くなるまで生涯、植物とともに生きてゆきました。そんな人間、「牧野富太郎」が植物らとともに、ここに描かれています。

(目次)


私の送った郷里のサクラ
崋山地下で泣く
ハゼノキの真物
菊の話
書帯草
野生食用植物の話
植物と人生
私は植物の精である
漫談・火山を割く
武蔵野の植物について述べる
草木
植物と心中する男
なぜ花は匂うか?
東京全市を桜の花で埋めよ
花菖蒲の一大園を開くべし
支那の烏飯
ホオノキ
アコウは榕樹ではない
アジサイ
そうじゃない植物三つ
正称ハマナシ誤称ハマナス
野草の大関タケニグサ
大島桜
椰子をことさらに古々椰子と称する必要なし
剣術独稽古のためメキシコに赴く
熱海にサボテン公園を作るべし
『益軒全集』の疎漏
野外の雑草
サクラ痴言
寒桜の話
花物語
受難の生涯を語る


(参考)