2012-04-30

緑の政治ガイドブック

『右でもなく左でもなく前へ進む政治』
巻末に「右でも左でもなく前へ進む運動を」として
鎌仲ひとみさんと中沢新一さんの対談が記されています
そのなかで中沢新一さんは本書について
緑の党をめぐる全体を公平な目で見ながら
必要な事項が網羅的に書いてあるガイドブック』
評しています

本書第四章ではこのような文が書かれています

『すべての緑の党が賛成するのは、銀行と金融制度を
根本的に改革することだ
一般に緑の党の経済政策は左翼的と考えられているが
伝統的な社会主義者が指向した
官僚的で非民主的な中央経済計画を否定する
この傾向は緑の党が、E・F・シューマッハーの思想に
大きな影響を受けていることによる
シューマッハーは次のように指摘する
「”規模の経済学”が、技術が進歩することによって、国家と同様に
産業も企業も、すべてを統合しながら巨大化するという不可逆的な流れがある
と考えられる。しかし現実の社会では、組織を小規模にした方が、小回りが利いて
便利な上、人間が管理しやすいのである
大切なのは、社会にとって一見、真実に反すると思えるような
必要性
を維持することだ。人々は巨大化信仰にとり憑かれているが
社会的な活動にはそれぞれ適性な規模があるのだ」
緑の党の地域分権主義者は
「地域が管理することで市場は制御できる」
と主張する
ただしエコ社会主義者はその見解に懐疑的で
「貧しい者から奪い、富める者に与えることで企業独占を促進するのが市場の本質だ」
と批判する』


どこかの国で「見、聞き」したような状態が書かれていると、思いませんか?!

(目次)

はじめに―推薦の言葉

シンシア・マッキニー(2008年アメリカ大統領選挙・緑の党候補)
キャロライン・ルーカス(緑の党・EU議会議員)
ナンドール・タンクゾス(ニュージーランド緑の党・前国会議員)
ロベルト・ペルツ・リベロ(キューバ・持続可能な世界を目ざす社会運動家)

序文

第一章 世界に広がる緑の政治
「ドイツ緑の党」の四つの政治理念/「緑の政治」は氷山のようなもの
「緑の政治」はタスマニアから生まれた/『成長の限界』の衝撃
「緑の政治」に影響を与えた思想家たち/「ケニア緑の党」ワンガリー・マータイにノーベル平和賞
アメリカ、カナダでの劣勢/アジア太平洋・緑のネットワークの発足
アジアでの動き/中東でも緑の党が生まれている
EUにおける緑の党の躍進/「アース・ファースト!」による直接行動
「クライメイト・キャンプ」と「トランジション・タウン」/緑の政治とは何か?
「ドイツ緑の党」ペトラ・ケリーの生と死

第二章 温暖化する地球
ニコラス・スターンの報告書/フィードバック・メカニズムの崩壊
サンゴ礁やマングローブ林の破壊/グローバル化する環境問題
地球レベルで悪循環が起こっている/根本原因としての経済成長
「排出権取引」の問題点/気候変動によるアパルトヘイト
科学技術は環境問題を解決するか/進むべき道をさぐる
キューバの有機農法「パーマカルチャー」/低炭素社会の実現へ
気候変動の影響を受けるのは誰か/「氷が溶けた世界」はどうなるのか
「排出権取引」という新たな市場/CO2排出量トップ10の国

第三章 緑の哲学とは何か
緑の哲学の中心にあるもの/「ディープ・エコロジー」という概念
「七世代のルール」を守る/地球の「限界性」を知る
ホリズム(全体論)の重視/問題が起こる前に予防し、解決する
科学技術による解決には慎重/「自然中心主義」の意義と課題
緑の政治は右か左か/エコ・アナーキズム
エコ社会主義/エコ・フェミニズム
エコ・ファシズム/地球と精神性
人間と自然の関係を見直す/ディープ・エコロジーの八原則
「社会的エコロジー」とはなにか/地球を救う十の命題―ボリビア大統領エボ・モラレス

第四章 「欲求」でなく「必要」を満たす経済
経済成長か、生態系の維持か/経済成長と幸福感
あらゆるものが商品になる/経済成長が格差を拡大する
新たな経済指標を/成長なしで繁栄を生む/「社会的共有」は実現可能か
共有地が環境保全に有効/強大化する多国籍企業
市場を地域社会に「埋め込む」/拡大する経済活動が環境を破壊する
エコ・フェミニズムの視点/ベーシック・インカムが目ざす社会
『スモール・イズ・ビューティフル』/緑の経済学が目ざすもの
ブータン王国の「国民総幸福量」/「コモンズ(共有地)」を取り戻す
ノーベル経済学賞受賞エノリア・オストロムの「七世代の原則」
森とともに生きる―マリーナ・シルバ(緑の党・ブラジル大統領候補)

第五章 生命のための政治
再生可能なエネルギーを/公共交通の活用
廃棄物をゼロにする/大地と海を守る/「動物福祉」とは何か
公正な社会を求めて/ホームレス問題の解決/医療保険制度の拡充
人権問題をどう考えるか/草の根民主主義の復権
核兵器に反対し、平和を求める/開発援助から「社会的公正」へ
確かな平和を築くために―ワンガリ・マータイ

第六章 生き残りをかけた戦略
政治をどのように動かすか/学生運動の合流
既成政党との妥協と戦略/直接行動か、政党活動か/個人レベルの変革
「トランジション・タウン」という選択/「トランジション・タウン」の可能性
「緑の資本主義」は可能か/「地球に優しい」は本当か
「緑の労働組合」と緑の経済/文化を変えていく
文化を変えることが改革の本質/希望のラテンアメリカ
「コペンハーゲン」から「コチャバンバ」へ/なぜ直接行動が必要なのか
資本主義は気候変動を生き残れるか/「グリーン・ニューディール」とは何か
「アンカレッジ宣言」(気候変動に対する先住民の見解)

解説
右でも左でもなく前へ進む運動を
鎌仲ひとみ×中沢新一

さらに学びたい人のためのブックリスト

訳者あとがき


(参考)