『右でもなく左でもなく前へ進む政治』
巻末に「右でも左でもなく前へ進む運動を」として
鎌仲ひとみさんと中沢新一さんの対談が記されています
そのなかで中沢新一さんは本書について
『緑の党をめぐる全体を公平な目で見ながら
必要な事項が網羅的に書いてあるガイドブック』
と
評しています
本書第四章ではこのような文が書かれています
『すべての緑の党が賛成するのは、銀行と金融制度を
根本的に改革することだ
一般に緑の党の経済政策は左翼的と考えられているが
伝統的な社会主義者が指向した
官僚的で非民主的な中央経済計画を否定する
この傾向は緑の党が、E・F・シューマッハーの思想に
大きな影響を受けていることによる
シューマッハーは次のように指摘する
「”規模の経済学”が、技術が進歩することによって、国家と同様に
産業も企業も、すべてを統合しながら巨大化するという不可逆的な流れがある
と考えられる。しかし現実の社会では、組織を小規模にした方が、小回りが利いて
便利な上、人間が管理しやすいのである
大切なのは、社会にとって一見、真実に反すると思えるような
必要性
を維持することだ。人々は巨大化信仰にとり憑かれているが
社会的な活動にはそれぞれ適性な規模があるのだ」
緑の党の地域分権主義者は
「地域が管理することで市場は制御できる」
と主張する
ただしエコ社会主義者はその見解に懐疑的で
「貧しい者から奪い、富める者に与えることで企業独占を促進するのが市場の本質だ」
と批判する』
と
どこかの国で「見、聞き」したような状態が書かれていると、思いませんか?!
(目次)
はじめに―推薦の言葉
シンシア・マッキニー(2008年アメリカ大統領選挙・緑の党候補)
キャロライン・ルーカス(緑の党・EU議会議員)
ナンドール・タンクゾス(ニュージーランド緑の党・前国会議員)
ロベルト・ペルツ・リベロ(キューバ・持続可能な世界を目ざす社会運動家)
序文
第一章 世界に広がる緑の政治
「ドイツ緑の党」の四つの政治理念/「緑の政治」は氷山のようなもの
「緑の政治」はタスマニアから生まれた/『成長の限界』の衝撃
「緑の政治」に影響を与えた思想家たち/「ケニア緑の党」ワンガリー・マータイにノーベル平和賞
アメリカ、カナダでの劣勢/アジア太平洋・緑のネットワークの発足
アジアでの動き/中東でも緑の党が生まれている
EUにおける緑の党の躍進/「アース・ファースト!」による直接行動
「クライメイト・キャンプ」と「トランジション・タウン」/緑の政治とは何か?
「ドイツ緑の党」ペトラ・ケリーの生と死
第二章 温暖化する地球
ニコラス・スターンの報告書/フィードバック・メカニズムの崩壊
サンゴ礁やマングローブ林の破壊/グローバル化する環境問題
地球レベルで悪循環が起こっている/根本原因としての経済成長
「排出権取引」の問題点/気候変動によるアパルトヘイト
科学技術は環境問題を解決するか/進むべき道をさぐる
キューバの有機農法「パーマカルチャー」/低炭素社会の実現へ
気候変動の影響を受けるのは誰か/「氷が溶けた世界」はどうなるのか
「排出権取引」という新たな市場/CO2排出量トップ10の国
第三章 緑の哲学とは何か
緑の哲学の中心にあるもの/「ディープ・エコロジー」という概念
「七世代のルール」を守る/地球の「限界性」を知る
ホリズム(全体論)の重視/問題が起こる前に予防し、解決する
科学技術による解決には慎重/「自然中心主義」の意義と課題
緑の政治は右か左か/エコ・アナーキズム
エコ社会主義/エコ・フェミニズム
エコ・ファシズム/地球と精神性
人間と自然の関係を見直す/ディープ・エコロジーの八原則
「社会的エコロジー」とはなにか/地球を救う十の命題―ボリビア大統領エボ・モラレス
第四章 「欲求」でなく「必要」を満たす経済
経済成長か、生態系の維持か/経済成長と幸福感
あらゆるものが商品になる/経済成長が格差を拡大する
新たな経済指標を/成長なしで繁栄を生む/「社会的共有」は実現可能か
共有地が環境保全に有効/強大化する多国籍企業
市場を地域社会に「埋め込む」/拡大する経済活動が環境を破壊する
エコ・フェミニズムの視点/ベーシック・インカムが目ざす社会
『スモール・イズ・ビューティフル』/緑の経済学が目ざすもの
ブータン王国の「国民総幸福量」/「コモンズ(共有地)」を取り戻す
ノーベル経済学賞受賞エノリア・オストロムの「七世代の原則」
森とともに生きる―マリーナ・シルバ(緑の党・ブラジル大統領候補)
第五章 生命のための政治
再生可能なエネルギーを/公共交通の活用
廃棄物をゼロにする/大地と海を守る/「動物福祉」とは何か
公正な社会を求めて/ホームレス問題の解決/医療保険制度の拡充
人権問題をどう考えるか/草の根民主主義の復権
核兵器に反対し、平和を求める/開発援助から「社会的公正」へ
確かな平和を築くために―ワンガリ・マータイ
第六章 生き残りをかけた戦略
政治をどのように動かすか/学生運動の合流
既成政党との妥協と戦略/直接行動か、政党活動か/個人レベルの変革
「トランジション・タウン」という選択/「トランジション・タウン」の可能性
「緑の資本主義」は可能か/「地球に優しい」は本当か
「緑の労働組合」と緑の経済/文化を変えていく
文化を変えることが改革の本質/希望のラテンアメリカ
「コペンハーゲン」から「コチャバンバ」へ/なぜ直接行動が必要なのか
資本主義は気候変動を生き残れるか/「グリーン・ニューディール」とは何か
「アンカレッジ宣言」(気候変動に対する先住民の見解)
解説
右でも左でもなく前へ進む運動を
右でも左でもなく前へ進む運動を
鎌仲ひとみ×中沢新一
さらに学びたい人のためのブックリスト
訳者あとがき
(参考)