2012-04-28

小さいことはすばらしい。

 現代の予言書ともいうべき
シューマッハー(E.F.Schumacher)の名著です
本書のタイトルが
編集者により「命名」されたというエピソード
(本題は『ふるさと派(ホーム・カマーズ)』)
あまりにも有名です
それは本書第二部・第五章にある
『人間の顔をもった技術』
という章に書かれています

その章がおさめられている「第二部」には
「原子力」
という「新しい次元をもった危険性」ということについて書かれているものもあります

そうした章と並んで書かれた章から
「スモール・イズ・ビューティフル」
命題がされた文章
ここで
その題名に選ばれた部分を少しご紹介しておきます

『 技術の発展に新しい方向を与え、技術を人間の真の必要物に
立ち返らせることができると信じている
それは人間の背丈に合わせる方向でもある
人間は小さいものである
だからこそ、小さいことはすばらしいのである
巨大さを追い求めるのは、自己破壊に通じる
では、方向転換には
どのくらいのコストがかかるのか
生き残るためのコストを計算するのは邪道ということを
忘れてはならない
もちろん、価値あるものはただでは手に入らない
技術の方向を切り替えて
人間破壊ではなく、人間に奉仕させるには
何よりも想像力を働かせ、恐れを捨てる努力が必要である 』


シューマッハーは、本書を通し一貫していいたかったことは
「人間」
という生物がもつ
「欲望(利)」
呪縛からの開放をして
真の新しい人間生命を尊重した「人間文明」とも言うべき社会構築を
経済学者という立場から論じたものであったのだと
思うのです

約40年が経った現在
本書に書かれた言葉の輝きがいや増して感じられるのは
シューマッハーが未来社会へと残した
「啓示」
でもあるからなのでしょう

『スモール・イズ・ビューティフル』
小さいことはすばらしい...。


(目次)

訳者まえがき

第一部 現代世界
第一章 生産の問題
第二章 平和と永続性
第三章 経済学の役割
第四章 仏教経済学
第五章 規模の問題

第二部 資源
第一章 教育―最大の資源
第二章 正しい土地利用
第三章 工業資源
第四章 原子力―救いか呪いか
第五章 人間の顔をもった技術

第三部 第三世界
第一章 開発
第二章 中間技術の開発を必要とする社会・経済問題
第三章 二〇〇万の農村
第四章 インドの失業問題

第四部 組織と所有権
第一章 未来予言の機械?
第二章 大規模組織の理論
第三章 社会主義
第四章 所有権
第五章 新しい所有の形態

結び

シューマッハーの人と思想

年譜


(参考)