3・11からの建築は
この「本」がテキストとなり、はじまっていかなければ、と思いました
建築家・伊東豊雄さん
と
思想家・人類学者の中沢新一さん
が
折々の対談を「一冊の書」として纏められています
それは
伊東さんの事務所であり、イベント会場だったり、伊東豊雄さんのひらかれている
「伊東建築塾」での特別講座などでありました
この本は
2011年3月11日に発生した
未曽有の「巨大地震」と「巨大津波」
そして
安全神話で塗り固められてきた「原子力発電所」の事故、放射能の拡散
という
日本、いや、世界がいまだかつて経験したことのないような「複合災害」から
「建築でできることはなにか」
ということを
まじめに語り合ったものなのです
まじめに語り合ったものなのです
全280ページほどの「文」「スケッチ・写真」から纏められていて
現在の行政や建築、そして土木などの抱える
「諸問題」やこれからの日本を「どう立てなおしていくのか?」という
道筋が克明に述べられています
そのなかで
建築家・伊東豊雄さん
思想家・中沢新一さん
建築史家・藤森照信さん
の
こころに残った「一文」をご紹介させていただきます
【伊東豊雄】
現代建築も、防潮堤と同じで、「内と外を境界一つで隔てる」近代主義的思想で
考えられており、エコロジカルな建築といったところで
断熱性能を高めて人工環境である内部の消費エネルギーを
減らすことだけを考えている場合がほとんどです
しかし、そうではなくて、人間のいる空間、つまり内部空間を
もっと「自然(外部)に近づけて」いかなければ
本質的な意味での「エネルギー削減」にはならない
と
私は考えています
だからむしろ、近代以前の日本の住宅にすでにあったような
考え方を取り入れて、テクノロジーを使ってもっと
「ソフトに活用する方法」を考えていくべきだとおもっています
【中沢新一】
もう「建築でやることは終った」
あるいは人間に可能な経済システムや芸術などはもうだいたい出尽くした
と
思ってしまう今の状態は
思ってしまう今の状態は
ゲームの「ルールの中に閉ざされている」もの
で
で
外が「みえなくなって」しまっている状態にすぎないのだと思うんですね
【藤森照信】
建築家で「反転」という操作をした人はいないんです。
当たり前のことだけど、内と外は切るか連結させるか、のどちらかです
日本は伝統的に内と外が連なるやり方をとり
ヨーロッパは切るというやり方をとってきた
反転というのはつまり、「内が外になる」ことであり
わっかたようなわからないようなことなんです
(伊東さんが)難しい反転建築をつくったとき
どうして外観が、どうしようもなくなるのか
外観に元気がないんですよ
伊東さんにこのことを訊ねたら
「外観はなくなってほしい-外観がないというわけにはいかないからしょうがなくつくってる」
本書の腰巻には、伊東豊雄さんと中沢新一さんからわたしたちへの
示唆と思えるような言葉が残されています
『現代社会において「自然から祝福される建築のあり方」とはどのようなものなのだろうか。
3・11以降、この言葉のもつ意味は重い。(伊東豊雄)』
『大震災、原発事故、TPP問題と、続けざまに日本人に襲いかかっている危機.........ここを「切り抜ける」こと
ができなければ、おそらく日本の文明は「滅びの道」に入ってしまう。(中沢新一)』
(目次)
はじめに
第一章
地域と公共性の大転換
建築の公共性をあらあためて考える/復興「都市計画」への違和感を乗り越える
被災者がつくる「みんなの家」を手伝って/三・一一後のサスティナブルな建築
建築家はネゴシエーターであれ/近代主義的建築からの大転換を
第二章
人と自然の大転換
1 「伊東豊雄の建築」を中沢新一と考える
建築を決定しているのは自然である/中野本町の家と流動空間
気づくと地下空間的建築に戻っていた/日常を考える、サーカスのテント的スパイラル
自然のものは基本的に渦を巻いている/形になる前のものを表現したい
自然が支配する建築/建築が環境と関係をもつために
中と外とがひとつながりになった建築
2 自然と人間をわけない建築
3 縄文のこころと建築
反転する建築は論理ではとらえられない/絶対的な水平感
地べたと建築の関係はむずかしい/二十一世紀建築は科学と数学がつくった
建築に十万年の法をとりもどす
4 震災が建築につきつけた問題とは
足場なく動く空間に触れること/生きた世界を立ち上がらせる
「みんなの家」と民家の力/仮設住宅の貧しさ
かまどが森と人を救う/立ち止まってはいけない
第三章
エネルギーと建築の大転換
エネルギーの存在論を考える/原子力は生態圏外のエネルギー
太陽が降り注ぐ「贈与(ギフト)」/私たちは太陽の贈与経済の中にいる
心はキアスムの構造でできている/建築は大地を抑圧する
自然と敵対しない建築は可能か/キアスムがつくる建築を思考する
ウケモチノカミがもたらす富/神話的思考の建築にはひねりがある
フィシスの運動そのものを建築に/「自然の贈与」を考慮にいれたケネー経済学
女性的なるものでモダニズムを乗り越える/長いスパンで建築を考えるために
補論 建築のエチカ
おわりに
(参考)