2012-07-02

住む。42

日々に必要なものがあれば、
ほかに何もないほうがいいのだ。
なくてはならないものではなかった。
なくていい。そう思い切ることだった。
ある日、卒然と、そう思ったのだ。
何がなくていいか、それが、人生の
たぶんすべてだと。それは本当だった。
不要なものを捨てる。人生はそれだけである。
(Made in Poetry より)
「住む。42」
集まって住む、人と人がつながって住む
そんな「テーマ」のくらしが掲載されています

そこにあるくらしは
最初から「すべてを揃える」というものではなく
「こぢんまりと心地よい」
「ご近所付き合いの中で育つ」
「お互いの好きなモノが伝わりやすい」
「住みながらにして整えていく」
「心地よく、永く住むために」
「街とつながる」
「みんなの場所」
がある
「ひとつながりの家」のなかで育まれるもの。

また、いまあるものをきちんと使い
「建物の魅力を知り尽くし、自在に暮らし」ながら
年月とともに
「自分らしく住みこなす」ことのできる
「通過点としての住処」
本最新号では、描かれています

そんなすまいは「あたりまえの風景」のなかにあってこそ
輝いてくるもなのではないか?
「見たことがないのに美しい」
「記憶の奥底を刺激する」感覚
「長い間生きて」「その歴史を喚起したから」こその「懐かしさ」
それは
「母なる自然」と「その自然がかたちづくる風景」
によってつくられるのであって
「自然の失せた大都市という巨大文明社会では見たことはあるけれども懐かしくない風景」
「つくられた風景」となってしまうのです

ここに紹介されているくらしは
「雑木林に囲まれた空間」や「路地」「土間」など
先人がそのむかし、自然のなかで見つけた「心地よい」場所のつくりかたを
現代社会にうまく創りだしているものであると感じました
それは
「大いなる自然と野性の中でじっくりと深く染みこんで生き続け」
ながらつくられてきた「もの」なのだと思います

その「つくりかた」とは
「素人には分からない隅々まで、丁寧につくり」
「好みのモノを持込み、母から娘へ、孫へ」と受け継がれながら
「繰り返し直して使う」というモノへの愛着、自然への畏敬の念をもって
すすめられてきたのです

現代社会は
戦後、高度経済成長時代を物凄いスピードで進みながらつくられてきました
それは
まわりの「景色」もよく見えないくらいのスピードで走る車の窓から見る景色にも似ていました
自分の足で歩くということ。
自分の足でこぐ自転車にのって走るということ。
自分で感じることのできる
「風」や「匂い・味わい」、「景色」そして「音」。
そして「町並み」を眺めながらそこに住む「人」と挨拶をして
五感を研ぎ澄ませながら、いっしょに暮していくということ
近所の「魚屋さん」や「八百屋さん」に並ぶ食物を
会話をしながら選ぶ愉しみ

建築家・隈研吾さんは
20世紀は「村を失った時代」であるといい
建築家・宮脇檀さんは
先人の築いてきた「モノをふまえてつくる」ことが
その場所の「歴史(あるいは暮らし)的な町並みをつくる」ことだといいます

住む。42号
での
『新・向こう三軒両隣』
には
そんな現代社会の抱える「街に集まって住む」ということへの再考するための
問題提起の「場」となっているのでは、そうおもいます
(目次)

特集
新・向こう三軒
両隣り

この風景を、共に守る、共に暮らす。
奈良市青山 写真・飯貝拓司 文・田川公子

緑に溶け込む、瓦屋根のテラスハウス。
京都市右京区宇多野 写真・飯貝拓司 文・田川公子

6戸の貸室をもつ、小さな家。
東京都武蔵野市 設計と写真・西久保毅人

19年めの、現代版「屯」
写真・中嶋大助 文・平山友子

一人暮らしも大家族も
住む人みんなが、いきいき暮らす。
コレクティブハウスかんかん森
写真・砺波周平 文・松井晴子

リポート
「集まって暮らす」
「経堂の杜」「大森ロッヂ」「ゆいま~る那須」
「たまむすびテラス」「やかまし東京シェアハウス」
文と写真・村島正彦/平山友子

特別企画1
厳選・日用品図鑑 選ぶ人・日野明子
写真・雨宮秀也 文・日野明子

特別企画2
鈴木喜一のバタネス紀行
見たことのない、懐かしい風景。
絵と写真と文・鈴木喜一

連載
Made in Poetry 徒然草第百四十段のこと 詩・長田 弘
新・暮らしの絵日記 着物を着る 絵と文・大橋 歩
どこかにある 水の街、烏鎮に見とれる 文・原研哉
僕の生活散歩 紙の水筒 文と絵・三谷龍二
家をつくるなら、近くの山の木で 次世代を見据えた家づくり 写真・山田新治郎 設計・石川恒夫
手仕事を聞く 洋傘 写真・池内功和
名前のない道 根拠2 文・赤木明登
エネルギー探偵の時事談義 米中太陽電池戦争 文・槌屋治紀
センス・オブ・プロポーション ママチャリの話 文・畦上圭子
風土倶楽部のおすそわけ ソーセージ 文・朝田くに子 写真・鈴木亮
前川秀樹の物語集 トモカズキ
sumu square
次号予告

(参考)