「水、石、竹、土、和紙」と「大地」をつなぐ建築
20世紀の建築はその「場所」に『どうあるか、どうつくられているか』ではなく
『存在』と『表象』を切り離されて考えられてきました
それはまるで
『テクノロジーを競い合う広告代理店』の広告
そのものでした
その手法として『コンクリート』という材料が多用されながら
『広告』としての建築は人間にとってほんとうの豊かさからは、どんどん離れてゆきました
また
このコンクリートという、どんな「カタチ」にも追従してゆける材料は
建築家たちの表現までも自由にさせながら
『普遍的』ものとしてその姿を世界各地に現していったのです
日本でもその傾向は強くて
その場所に育った『森の木』を木材として利用することがいちばんよい
とされてきた「つくりかた」である木造は『見かけ』も『機能』もその建築が
しっくりとなじむ、という『語り伝え』とは別に少しずつ減ってゆきました
こうして
その場所にたつ『根の生えた』建築も見られなくなってしまいます
しかし
こうした建築の『存在(生産)』を広告的に『消費』してゆくようなつくり方は
もう終わりにしなければならないとおもいます
それには
建築の『存在』と『表象』をひとつのものとして『つなぎ直し』てゆくことからはじめることだ
これが本書『自然な建築』のテーマなのです
これが本書『自然な建築』のテーマなのです
この本に登場する「8つ」の建築は
この「テーマ」を再考しながらつくられた「ケーススタディな」場所なのです
歌川広重-名所江戸百景 より |
◇◇◇
①水/ガラス
「海面」と「床」を一体にさせようと考えられた『水の粒子』のような建築
②石の美術館
「石」と「空気(光)」が一体となった『グラデーション』のような建築
③ちょっ蔵広場
大谷石の壁にあけられた「無数の孔」と
何十年もかかってついた「汚れ」が一体となった『すきだらけ』の石の建築
④那珂川町馬頭広重美術館
この建築の立地する裏山にある「(八溝)杉の林」にある「空気の質感」「光の状態」
をうつしかえた、歌川広重の『大はしあたけの夕立』のような建築
⑤グレート(バンブー)ウォール
中国・万里の長城の土に育った、「バラツキ」の多い曲がった竹を
その自然のままに『身を委せた』てできた多様性ある建築
⑥安養寺木造阿弥陀如来坐像収蔵施設
「豊浦土」という「調温・調湿機能の備わった土粒子」でできた「日干し煉瓦」
によって空調設備の不要な『豊浦ねずみ』という生き物のような建築
⑦亀老山展望台
山に「埋め込まれた」メスの建築
⑧高柳町、陽の楽家
「柿渋」と「蒟蒻」と「和紙」とを使ってできた茅葺き民家の多く残る町に
『和紙だけで内と外を仕切った』建築
◇◇◇
越後長岡発/建築・風景写真より |
(目次)
序章
20世紀とは
1
流れゆく水
水平へ、そして粒子へ
2
石の美術館
切断の修復
3
ちょっ蔵広場
大地と融けあう建築
4
広重美術館
ライトと印象派と重層的空間
5
竹
万里の長城の冒険
6
安養寺
土壁のデモクラシー
7
亀老山展望台
自然と人工の境界線
8
和紙
究極の薄い壁
終章
自然な建築はサステイナブルか
あとがき
(参考)
1995.03 Shizuoka
2000.07 Tochigi
2006.03 Tochigi
2000.07 Tochigi
2002.04 Beijing,China
02.10 Yamaguchi
1994.03 Ehime
00.04 Niigata