2012-09-24

建築雑誌2012―09。

表紙に刻印された
「建築雑誌」という文字は
1887年創刊号に使用されたものを復刻した
「金型」で印字されています
本号は、2011年度日本建築学科各委員会の活動を総覧できるように纏められているものです。そのうち「地球環境委員会」の活動ではあの「夏の学校」で住宅における現在の室内気候について話された小玉祐一郎さん(神戸芸術工科大学教授)が『3.11が問いただす持続可能性の指標』として報告されています。以下、箇条書きに記述して纏めておきたいと思います。

◇◇◇◇◇
地球環境委員会の目的
社会の低炭素化に向けて地球温暖化対策に貢献する「都市・建築」分野の研究を推進すること
①地球環境負荷発生の実態を調べる
②上記の抑制に効果的な対応を探る
③上記の対応による成果を発信する
地球環境への「負荷となるもの」と、その「研究分析」
①エネルギーに由来するもの
②物質循環に由来するもの
調査研究・・・実態を明らかにするもの
ツールの開発・・・実態調査による環境負荷を「評価・予測」するもの
調査研究・ツールの評価などから得られた成果などによって、
「建築・都市の設計手法」や「将来への行動規範」へと研究をすすめること
地球環境委員会WGの内訳
            A.LCAとモニタリング            
①気候変動対策小委員会
②炭素収支と資源利用小委員会
③炭素収支データ作成WG
④LCA指針小委員会
⑤環境負荷削減と構造小委員会
⑥アジア地域における建築環境とエネルギー消費検討小委員会
            B.サスティナブル建築            
⑦サスティナブルビルディング評価フレーム小委員会
⑧長寿命建築刊行WG
⑨地球環境時代における木材活用WG
⑩住宅カーボンニュートラル達成シナリオWG
⑪サスティナブル建築デザイン小委員会
          C.サスティナブルな都市・地域          
⑫都市と気候適応小委員会
⑬エコロジカルリージョンWG
⑭地球環境からみた高耐震都市研究WG
                D.行動                
⑮地球環境配慮型住育小委員会
これらの小委員会は、
「調査・評価(A.)」から「計画・広報・行動(B.C.D.)」へと比重変化してきており、
総合的な評価方法の開発・普及にその研究対象が移ってきていることが窺える
環境負荷の削減を図るために考えねばならないこと
建築・都市といったハードとなるシステムの部分
ライフスタイルという社会やコミュニティなどソフトの部分
自然克服型の「強度」や「効率」への追求の限界
社会学的な対応も含めた「しなやか」な自然対応
都市や建築のストックのあり方
エネルギー供給ネットワークのあり方
エネルギー消費の7割が環境負荷発生要因を引き起す原発
三分の一を占める家庭内電力消費
建築の省エネ
①建築自体のデザイン
②設備機器システムの効率化
③再生利用エネルギーの導入
①~③の三要素は「三つ巴」の構造になっているということ
居住者のライフスタイルが「多様化」してきていること
多様化する建築
(とじる建築)
24時間冷暖房を前提とする建築空間では「設備の高効率化」
外部環境に影響の受け難い「外界からの遮断」と「高断熱・高気密化」
⇓⇓⇓
◆設備機器効率の向上は需要を増やし、総体消費量の増大につながる◆
「ジェボンズのパラドックス」
◆住宅(建築)として、社会や自然から隔絶された状況が望ましいことか◆
「スマートハウス、スマートシティ」
厄介な議論(住宅と社会の関り合い、総体消費量など)を避け
「高品質なエネルギー(ハイ・エネルギー)」の
「利用効率の向上」と「代替(再生)エネルギーの供給」を課題とする傾向
(ひらく建築)
カプセル的住宅を排除した外界とレスポンシブな関係を有する住宅モデル
⇓⇓⇓
◆太陽熱、自然風、気温(の変化)、といった大量にあるエネルギー◆
◆低密度なエネルギー(ロー・エネルギー)の活用と建築デザイン◆
使い分けるエネルギー
(建築の)用途に応じて
「ハイ・エネルギー」と「ロー・エネルギー」を使い分け
わたしたちの生活に必要不可欠で貴重な「ハイ・エネルギー」を有効利用する
⇓⇓⇓
設備システムの高効率化・新エネルギー(PV)などの開発も併行して取組む
◆多様なライフスタイルに対応した省エネ戦略、地球環境負荷低減戦略◆
(多様なライフスタイル=地域のコミュニティ、気候風土、文化など)
◆自然との「力づくの対決」から「しなやかな対応」へのシフト◆
◇◇◇◇◇


(目次)

《以下、特集部分のみ掲載》
特集
建築年報2012
特集前言
激動の1年の記録を未来へ
座談会
震災から1年を振り返って―建築学会の活動
北原啓司×腰原幹雄×中島正愛×平石久廣×布野修司
座談会
建築学会の国際化―UIA2011東京大会を振り返って
宇野求×斎藤公男×藤井由理×渡邉眞理
材料施工委員会活動報告 建築改修工事標準仕様書の制定に向けて
本橋健司
構造委員会活動報告① 構造委員会のあゆみ―2011年度
中島正愛
構造委員会活動報告② 信頼性工学利用小委員会 荷重運営委員会PD
小檜山雅之
構造委員会活動報告③ 二次設計規準作成小委員会
和泉信之
防火委員会活動報告 建物火災と市街地火災に関する調査・研究
田中哮義
建物歴史・意匠委員会活動報告 人海戦術による被災調査の年
伊藤毅
環境工学委員会活動報告 東日本大震災後の建築・都市のエネルギー需要再構築に向けて
佐土原聡
建築社会システム委員会活動報告 課題・成果・展望
安藤正雄
建築法規委員会活動報告 変革期の建築法規を展望する
赤崎弘平
都市計画委員会活動報告 震災復興1年目 短期・中期・長期の複眼的パースペクティブのもとで
小林英嗣
建築計画委員会活動報告 東日本大震災に関係する活動を中心に
松村秀一
農村計画委員会活動報告 震災を契機とする農村計画課題の模索
三橋伸夫
建築教育本委員会活動報告 建築教育の革新を目指して
石川孝重
海洋建築委員会活動報告 計画・設計指針作成と東日本大震災津波被害調査
濱本卓司
情報システム技術委員会活動報告 情報システム技術と都市・建築との関係性の探求
加賀有津子
文教施設委員会活動報告 活動報告
長澤悟
災害委員会活動報告 災害調査
平石久廣
地球環境委員会活動報告 3.11が問いただす持続可能性の指標
小玉祐一郎


(参考)