汽車の車窓や、その土地々での風景もほとんど
その地域ごとの特徴を
見ることは少なくなってきました
山がなくなり
丘は平らになって
遊水地という無味乾燥な「巨大な溜池」がつくられて
無機質な四角い宅地を
アスファルトで繋ぐ道路が縦横に走りより一層「街の表情」を均質化していった
それがわが国の住宅地開発でした
この本の著者でもある水島信(みずしままこと)さんは
1947年新潟に生まれ
24歳でドイツ・ウィーンに渡ります
そのままミュンヘンで建築家として都市計画・建設の仕事に従事します
「ドイツ」と「日本」の街のつくられかたは
「どこ」が違うのか
「なぜ」違うのか
「どうして」そういった街づくりが続けられるのか
ドイツと日本の「街並み」や「都市計画図」など、豊富な図版をもとに
わかりやすく論じられています
また
本書はその性格からして、日本の都市計画や都市デザインに携わるモノからの
痛烈な批判やコメントが多数、寄せられているようで、
(そのことについて)水島さんは
『「百聞は一見にしかず」が真意である。現場を見ていただくほうが理解度が高いというのは、自分の経験でも承知している。百の文章を並べてみても、実際に事例を見るほうがどれほど参考になるかというのに説明はいらない。そこで、「街づくりの例をちょっとドイツに見に行こうか」というときの旅行案内程度のものとお考えいただくと、この独り善がりも鼻につかなくなるだろう。』
と述べられています。
水島信さんの「街づくり提案」をここに抜粋しておきます
※実例など掲載されているものには(「」)をつけて併記しました。
その地域ごとの特徴を
見ることは少なくなってきました
山がなくなり
丘は平らになって
遊水地という無味乾燥な「巨大な溜池」がつくられて
無機質な四角い宅地を
アスファルトで繋ぐ道路が縦横に走りより一層「街の表情」を均質化していった
それがわが国の住宅地開発でした
この本の著者でもある水島信(みずしままこと)さんは
1947年新潟に生まれ
24歳でドイツ・ウィーンに渡ります
そのままミュンヘンで建築家として都市計画・建設の仕事に従事します
「ドイツ」と「日本」の街のつくられかたは
「どこ」が違うのか
「なぜ」違うのか
「どうして」そういった街づくりが続けられるのか
ドイツと日本の「街並み」や「都市計画図」など、豊富な図版をもとに
わかりやすく論じられています
また
本書はその性格からして、日本の都市計画や都市デザインに携わるモノからの
痛烈な批判やコメントが多数、寄せられているようで、
(そのことについて)水島さんは
『「百聞は一見にしかず」が真意である。現場を見ていただくほうが理解度が高いというのは、自分の経験でも承知している。百の文章を並べてみても、実際に事例を見るほうがどれほど参考になるかというのに説明はいらない。そこで、「街づくりの例をちょっとドイツに見に行こうか」というときの旅行案内程度のものとお考えいただくと、この独り善がりも鼻につかなくなるだろう。』
と述べられています。
水島信さんの「街づくり提案」をここに抜粋しておきます
※実例など掲載されているものには(「」)をつけて併記しました。
街づくり提案01
観光客が集まる理由は、風光明媚な風景、美味な食、それに建築物をも含んだ高質な芸術にある。この三つの要素のどれかがあることが、人を惹きつける原因になる。
街づくり提案02
自分の街を自分の空間と自覚し、長所を伸ばし短所を改善する
街づくり提案03
訪問者用の施設を前もって準備する。また、オリエンテーションがとりやすい工夫をする。特に知らない街では、自分が今どこにいるのかわかれば安心だし、街への親近感につながっていく。そのためには、中心的な場所、または、中心軸等のオリエンテーションの焦点になるものと、それをもとにした回路を形成することや、路地の切れ目から山の山頂が見える、水の流れで方向を知るなど、自然や地勢を利用して場所の中の位置を明快にするという都市デザイン上のテクニックを駆使したらよい。また、案内板や道路名標識等のインフォメーションを景観に対して控えめに備えるなど、観光案内の実務面にも配慮する。(イタリア・チュゼーナ」など)
街づくり提案04
設備・配管を屋外に露出しない。特に換気扇は通行する人に汚染した風を吹きつけ、人権無視ということにもなりかねない危険がある。(「日本のオフィス・商業ビル」など)
街づくり提案05
街区形成のための都市計画指針が明確であれば、そのルールの中で複数の建築家が自由に設計しても街並みは秩序をもったものになる。(「ブランデンブルグ門周辺」など)
街づくり提案06
地下水や災害時対策は現在の施工技術においては問題は少ない。ゆえに、地下空間を有効に活用することを考慮すべきである。(「パリ・シャルル・ド・ゴール駅」など)
街づくり提案07
市街地に限らず、水面を設けたら、水が流れないと環境には十分な効果をもたらさないことに留意する。(「ジュッセルドルフ・ラインオルト」など)
街づくり提案08
施工、または工事が容易と言って、簡単に道路や軌道などの交通網を高架にしない。交通車両が頭上を通るということは、イミッシオンを上から撒き散らすという環境汚染と、万里の長城を街区に築くという、都市景観的な弊害をもたらす。(「ノイ・ウルム駅周辺計画」など)
街づくり提案09
周辺の建物あり方に合わせるような、自己主張が少ない建物が並んだ街区のほうが落ち着いた雰囲気を醸し出す。(「フランクフルト西港」など)
街づくり提案10
隙間が多くて纏まりのない空間を閉じることによって、その空間に性格を与えることができる。(「ブレーメン・ドーム広場のパヴィリオン」など)
街づくり提案11
道路のカテゴリーを明確にする。道路使用目的を遠距離交通、通過交通路から住宅地道路及び遊戯兼用路といった都市機能に準じた利用目的で明確に区分する。(「ミュンヘンの集合住宅」など)
水辺のある街並み (左列上より)倉敷、飛騨古川、近江八幡、萩 (右列上より)越前大野、松江、柳川、醒ヶ井(さめがい) (本書挿画より) |
その街区の特徴ある建物、街の性格を形成している建物(群)、及び伝統的な建物を修復、保存に努める。そして、街区のストラクチャーを変えない。水面、樹木などの自然の要素や、小路などの街区の要素も環境改善の小道具として利用する。(「ミュンヘン・フォンフホーフェ:ヘルツォーク&デ・メロン」など)
街づくり提案13
互いに弊害になるような異なる土地利用形態の同居を避ける。例えば、伝統的に住労が一緒の金井工業地域以外では住居と工場の混在は避けるべきであるし、住宅地の中に交通量の増加などの住居環境に弊害的要素をもりこむ事務所建築が進入するのは規制したほうがよい。当然、用途の異なる土地利用形態が混在することによって、その地区の特性が決定されている場合はこの限りではない。
「古町の印象・風景」の特徴を形成する街区(枠組み)をつくり 設計を行うことにより古町の持つ要素が守られる (本書挿画より) |
新たに建設される建物の形、材料、色彩などは周辺の建物群の調和を乱さないように配慮することが重要である。特に、重要伝統建造物保存地区、風致地区、加えて伝統的建造物は少ないが景観が街全体で調和している地区などでは最新の注意が必要である。だからと言って、既存の様式をそのまま踏襲するのは安全策ではあるが、ある意味では街の成長が停滞してしまうという危険性を含んでいる。周辺街区の景観や特徴と調和しながらも、既存の建物にはなかった新たな質をもって将来的に街の新しい特性と質を創造するような、いわば将来の伝統を築きあげていく建物が望まれる。現在、伝統的と評価されている多くの建造物は、その当時は全くのモダンであったという事実を考えれば理解できるであろう。(「ミュンヘン・ウェストエンデ」など)
地区(街区)を一体的に捉えながら、お互いを補完し合える都市展開の例 (本書挿画より) |
用途地域計画の大まかなゾーニングをF-プランのような土地利用計画の細かさにグレードアップする。道路、鉄道、飛行場等の上位の都市計画によって決定された施設を考慮し、自治体の政策目的で決定される学校、病院等の公共施設と都市サーヴィス施設のキャパシティーによって導き出される容積率をもとにした地域構造を決める。
街づくり提案16
自然に任せながら少しばかり人の手を入れるという保全のほうが、経済的にも環境的にも人工的なものより数倍も効果がある。(「スウェーデン・フェストラハムネン居住地域の水際」など)
街づくり提案17
わずかばかりの予算増加で、わずかばかりの創造性が加われば、生活空間はより質の高いものになる。(「イタリア・アドリア海岸」「同・サルジニア島海岸」など)
街づくり提案18
秩序のないと思われる街区でも、そこにある構成のロジックを読み取ろうとすれば予期せぬ造形のヒントを見出だせることがある。スラムクリーニングの前にストラクチャーを見直すことと、混乱を逆手にとる創造性のための時間の余裕をもつのもよい。そこから、予想もつかなかった街区が生まれることもある。(「長浜黒壁スクエア・新潟」)
(目次)
はじめに
第一章
街づくりと民主主義
街づくりの基本
街づくりの形とその成立の背景
世界の常識と日本の常識-生活とその環境に存在する思考方法
西洋と西洋風建築-建築物のクオリティーと街区
建築は文化-建物と建築の意味するもの
共同体に住むということ-おらが町という自覚
都市行政と専門家-餅は餅屋の地方行政の必要性
街並み保存
第二章
欧州における都市の変貌
政治・社会と都市
駅とその周辺-停車場から停車場へ
川-水辺の生活空間としての復活
路の地下埋設化
港と港街の現在と未来
中世都市と車
都市の軸-人間空間への再生
都市建設と路
第三章
ドイツの都市計画
街並みの纏まり
集合住宅地の景観
建設許可
連繁建設街区-関連性を保って建設された街区
周辺地区への融合性-連邦建設法第三四条の基本概念
ミュンヘンの特性-STAFFELBAUORDNUNG
周辺地域の範囲
用途・高さ・奥行き
連邦建設法第三四条とB-プラン(BEBAUUNGSPLAN)
B-プランとその実務
建築家と都市計画
街づくりへの自覚
第四章
日本の街づくりへの提案
ドイツ都市計画手法を新潟で試みる理由
ドイツ空間整備の体系
RAUMORDNUNG・広域圏計画的考察-環日本海での新潟の位置
LANDESPLANUNG/REGIONALPLANUNG・地域圏計画-新潟広域圏と交通体系
路面電車についての考察-都市交通手段の検討
BESTANDAUFNAHME und ANALYSE・現況調査と分析-新潟市の都市構造
BAULEITPLANUNG・指針作成-新潟市の中心市街地機能
RAHMENPLANUNG・計画の枠組み-新潟駅と駅周辺整備
RAHMENPLANUNG・計画の枠組み-弁天・万代シティの位置づけ
掘割の再生-市街地での景観整備と環境保全の一手法
日本海海岸線の環境保全-市街地の近隣保養区の確保
RAHMENPLANUNG・計画の枠組み-古町・「オールド・タウン」構想
RAHMENPLANUNG・計画の枠組み-下町(しもまち)・「ひとまち」構想
BEBAUUNGSPLAN・建設計画図の実践
終わりに
(参考)