2012-07-10

フェルメールのカメラ 光と空間の謎を解く

フェルメールが
「カメラ・オブスクラ」のむこうに見た
「景色」とは?
「フェルメールのカメラ」より
オランダの画家、ヨハネス・フェルメール(1632.10.31-1675.12.15)は
「カメラオブスクラ」を用いて絵を描いていたということです

「カメラオブスクラ」とは写真撮影用としてのカメラの前身となるもので
ピンホール(針穴)の開いた(あるいはレンズのついた)簡素な装置のことで
ピンホールを通して入った「光」は
そのボックスあるいは壁面上に像として投影されるというものです

本書はその
フェルメールがカメラオブスクラという視点で捉え描かれたた「作品」と
その作品を「模型化」したり、数々の図版などを用いながら正確に示そうとしています

フェルメールは
「光・色調・陰影・色彩」
への
執着ともいえる「観察力」と「光学画像」のもつその特性を
自らの作品に「様式」として表そうとしました
それはたんに
「遠近法的構図」を求めるための「数学的方法」でもなく
鏡に映った像を「トレース」するような手法ではない
「特別な力」
によって「光の特性」を捉えるというフェルメールの能力なのかもしれません
「フェルメールのカメラ」より

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フェルメールの絵画をきわださせた「窓」と「素材(床)」など
フェルメールの室内画に登場する建築的特徴の「窓」のタイプと「床(タイル)」の種類
窓..........菱形、四角と円、砂時計、前記3つのタイプ以外
床............陶製タイル、黒字に白(四角)、黒字に白十字、白地に黒十字、天井が描かれている、スウィレンスの部屋の分類、再現可能性
フェルメールの部屋に描かれた家具と窓、部屋の高さ(本書にはその「実測値」が掲載されています)
ライオン頭の椅子、タペストリー張りの椅子、テーブル、バージナル、白い水差し
陶製タイル(146角)、大理石タイル(293角)、壁(130前後)、朝顔口の窓、開き窓、ガラス窓
部屋(天井)の高さは、「約2,600~3,200」と高めのものであったようです

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原著『Vermeer's Camere -Uncovering Truth Behind Masterpieces-』を書いた、フィリップ・ステッドマンは、1942年生まれ。ロンドン大学大学院の建築学・都市計画研究科の教授。ケンブリッジ大学の学部と大学院で建築学を学んだのち、同大学講師、オープン・ユニバーシティの講師・准教授・教授を経て、1999年から現職。1990年から1年間、デルフト工科大学の建築学科客員教授としてデルフトに滞在。専門は建築学、都市計画、環境設計。3冊の単著と18冊の共著のほか、40篇を超える論文を著しています。専門の研究のかたわら、フェルメールの「絵の空間」について研究を1970年末からはじめ以降、20年の歳月をかけて本書を著しました。また、フェルメール以外の画家についても、その描かれた空間の「3次元的再現」を試みています。

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(目次)

はじめに

謝辞

1章
カメラ・オブスクラ

2章
カメラ・オブスクラを用いたという発見

3章
カメラ・オブスクラを教えたのはだれか?

4章
描かれた部屋はどこにあったか?

5章
フェルメールの絵の空間を再現する

6章
謎に迫る

7章
フェルメールのアトリエを再現する

8章
反論に反論する

9章
フェルメールの絵の様式への影響

訳者あとがき

図版出典

さらに深く知るには

付録B フェルメールの部屋と家具の計測

付録A フェルメールの室内画に登場する建築的特徴


索引


(参考)