古川設計室web より |
「かお」のみえる山と町のとりくみとは。
萩林業士会
の
主催するセミナーへ
山口県阿武郡阿武町にある「のうそんセンター」までいってきました
一昨日からの寒波に見舞われた日本列島
会場となった山陰地方も
小雪の舞う寒い一日となりました
そんななか
山側の人間と町側の人間がお互いに
「ああ、こんな人が木を育ててくれているんだな」
「ああ、こんな人が自分の山の木で家を建ててくれるんだな」
という
至極あたりまえなことなんですが
現在の住まいづくりには、ほとんど存在しない状況をどう打開していくのか
その好例となる
の
会長でもあり建築家の古川保さん
と
会員の森林所有者の池松重孝さん
の
アツイお話を3時間あまり伺ってまいりました
主催者の挨拶のあと
まず
林業家の池松さんより「産直住宅」への取組から
山のことなどの詳しいお話がありました
ちょっと
行政や建築に携わるものにとって「不都合な真実」もありますが
古川さんの言われるように「そろそろ本音で語ろうよ」という趣旨に基づいて
公開させていただきます
*****
池松さんは熊本県芦北で
奥様とお二人で山を育てていらっしゃいます
「山を守りたい」
「地元の木を使ってほしい」
という思いを日々持ち続けながら、山の手入れ・間伐・植樹をされています
池松さんは
下草刈り、伐採、間伐材からの椎茸栽培、緑のさと(手づくりの五右衛門風呂)、木工教室
などを通して
山と町の人たちが交流できる場もつくられています
そんななか
平成13年ころ
建築家の古川保さんと出会うことになります
出会うというよりは、池松さんの奥様が何処かで古川さんのことを知って
「一方的」に押し掛けた(笑)というほうが、正しかったようですが...
古川さんの
「山にある木をそのまま使えるような設計をするべきだ」
というところに共感をもたれ
「熊本の山の木で家をつくる会」
で
活動を展開されるようになります
そのなかで
「皆伐」はやってはいけない
「葉枯らし乾燥」は、あまり効果が大きくない
「産直住宅にあった」山の木を育てる
という山づくりへ変わって行きました
そのようななかで培われた池松さんの基本方針
は
『全ての作業(伐採・搬出・販売)を自家労働でおこなう』
『間伐(できるだけ皆伐はおこなわない)を適切におこなう』
『付加価値を高める』
というものです
池松さんは「林内車」をつかって今日も、熊本の木を奥様と切り出していることでしょう
*****
続いて
建築家・古川保さんのおはなし
いきなり現在の住宅つくりについての「不思議」について話がありました
それは
住宅の着工棟数が減少しているにもかかわらず
あらゆる施策に「拡大」というフレーズがついているということ
手刻みをしていたころは、「年2棟」で食べられていたのに
プレカットにかわって、「年6棟」手掛けないと食べられなくなった
という大工さんのはなし
そして
『合理化が進めば進むほど競争は激化し、価格(単価)も下がり、仕事はなくなる』
『品確法が施行されてから、日本の木が売れなくなった(含水率・ヤング率など)』
といいます
これはもう、現状の「しくみ」や「体制」に真っ向から挑戦するような問題提起です
ここから古川さんの語りに熱が入ってゆきます
『木材断面を決めるためにスパン表に頼った住宅のつくりかたをしてはいけない』
(山の木に合わせた家をつくる)
『120×300と240×240は、同じ圧縮強度がある。木の断面は円形。
できるだけ正方形で断面設計をおこなう=日本の山の木をつかう、ことになる』
『120×300と240×240は、同じ圧縮強度がある。木の断面は円形。
できるだけ正方形で断面設計をおこなう=日本の山の木をつかう、ことになる』
『外材は、じつは安くない』
(輸送コスト・蟻害対策・健康配慮対策などの費用を考えると安くない)
『金物の家は所詮「補強」という考えのもの』
(ホッチキスは「金物で補強された家」と同じ。紙縒りは「日本の気候風土にあった」つくり方)
『柿の木とヤナギの木、日本の木造はヤナギでやるべき』
(筋交いは「強い」が「ねばり」はない)
『足固め工法はシロアリ強い』
『床下は開放させる』
『シロアリの住んでいない地方の外材を用いれば、国内に持ち込んだ瞬間、「薬漬け」
「シックハウス」そして「24時間換気を促される」の堂々巡りとなる』
『日本の国土の65%が森林。生育60年の木は二酸化炭素を吸って酸素をだす。
その木で住宅をつくる。解体された住宅は焼却、その二酸化炭素はまた山へ。自然の循環。』
『竹小舞を組む土壁はいい。
土はその「地域」にあるものだから、解体廃棄してももとの自然に戻すだけ。
石膏ボードは、破棄する時に「硫化水素」という有毒なガスを発生させる。
「不燃・壁耐力」を言い続ける行政と30年後の解体廃棄時の処理問題。
優先させるべきものは、どちらなのか?』
『竹小舞を組む土壁はいい。
土はその「地域」にあるものだから、解体廃棄してももとの自然に戻すだけ。
石膏ボードは、破棄する時に「硫化水素」という有毒なガスを発生させる。
「不燃・壁耐力」を言い続ける行政と30年後の解体廃棄時の処理問題。
優先させるべきものは、どちらなのか?』
『大陸の木は「平地」にあるのでまっすぐ育つ。日本の木は「山(斜面)」にあるので曲がる。』
『曲がったところは「梁」に使えばいい』
『シベリアの木を伐採すれば、木陰となっていた部分の永久凍土が氷解し
どんどん砂漠化が進行していき環境破壊へと繋がる』
『誰が外材を推薦するのか?会社・大工組織が大きくできてからおかしくなった』
『外材にあわせて、日本の木材の値段が決まっている』
『木は古いほど強度が出る。蟻害・腐食にあわなかったとした場合の材は200年目が最大強度。
その好例が、バイオリン。』
その好例が、バイオリン。』
『宮崎の木は安いと言って買いに来る不思議な「東京の人」たち』
『各地で違う木の育て方(吉野:10000本/ha、熊本:3000本/ha、宮崎:1000本/ha)』
『ヤング率を鵜呑みにしない(E50:39~58、E70:59~78、E90:78~98)単位:kN/m㎡
「58」と「59」は大差がないがヤング率表示では「4割」も違う』
『未乾燥材はよくない(いずれ乾いて強度がでる)、が、
完全乾燥材もよくない(重油を大量に燃焼・消費させる、表面のみの乾燥は材が脆くなる)』
『自然乾燥は木のもつ「艶」と「香り」がでる』
『ヒビは木材の強度と関係ない(判例でも証明されている)』
『未乾燥材は初期積載荷重が大事だ。大工はそれを考えて組む』
『伝統構法は材料が「縮む」ことを考えたつくりかたである』
『含水率は木材の比重を考えて論じないと成り立たないものである』
『人工乾燥は、PHが「4~5」になり釘が錆びる。木の養分が流失し
シロアリが(天然乾燥と比べ)2~3倍つきやすくなる』
『杉の木を売れにくくしている行政政策』
(蟻害対策は不問.....含水率=人工乾燥、認定は書類だけのもの?)
『檜より杉の赤身のほうが「ねばり」もあり木造には適材』
『等級や性能で考える木造住宅は、本当に永く住める家となるのか』
(性能で語ればあの吉村順三の住宅は最低レベル)
『温度と湿度を一緒に考える』
『北欧人と日本人の汗腺の数(能動汗腺数)の違い』
(日本人は激減している)
古川保さんの真摯な、おすがたを見聞きすることができました
『日本の伝統構法を遵守(じゅんし)』
『木組み・貫構法』
『プレカットや金物構法は行わない』
『新建材・集成材・外材は使用しない』
(参考)
風土と建築:宮川英二