選挙という「システム」を利用した「原子力発電所」の停止は可能なのでしょうか?
巻頭言で、ロッキング・オン代表の渋谷陽一氏がこのように書いています。
『現在、日本はほぼ「原発ゼロの国」である。それでも大きな問題はなく、電力は「供給」されている。本当に日本はすごい国だと思う。極端なことを言ってしまえば、2030年代とか言ってないで、このまま大飯原発を止めてしまえば、日本はいきなり原発ゼロになる。それは「可能」だと今の日本の現実が証明している。「政治的判断」さえあればできるのだ。他の原発の再稼働を止めているのは世論だし、大飯原発の停止を求める古賀(古賀茂明元経済産業省大臣官房付)さんたちの提言への支持も高い。つまり、そういう形で「政治は世論に追い込まれて」いくのである。山口県知事選に立候補した飯田哲也さんへの大きな支持も、敗れたとはいえ、「票」という形で顕在化したことで、既存の政治勢力に与えた影響は大きかった。これも選挙がなければできなかったことである。選挙という民主主義の基本システムをどう使うのか。それを今の日本は原発をテーマに学んでいる。きっと権力側の読みとしては、いずれ有権者は忘れ、原発問題は風化していくだろうと思っていたはずだ。しかし、そうはならなかった。それほどこのテーマは根深いのである』
本特集の「選挙で......」のうち、いまとなっては「有権者のこと」は権力側(国家を統治する政治家など)にとって、とても「大きなプレッシャー」になり、ひとつのムーヴメントを起こすかもしれないという「存在」になってきているということなのかもしれません。そのあたりのことを、過日、山口県知事選挙に立候補し、惜敗したものの「引っぺがし」がなければ、もしや...の結果もあったのでは、という環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏はこういいます。
『私が関わったものでは、長野県の阿部(守一)知事と、自然エネルギー信州ネットっていうネットワーク型の取り組みを1年前から始めました。地域ごとに協力しながら、それぞれの地域で自然エネルギーへの転換を進めていくというもので、ゼロ円ソーラーと言って、初期投資なしで太陽光発電を作るという、そういうモデルを始めようとしているんですが、だいぶうまく動き始めたっていうのがまずあって、それから、福島県では10年くらい福島県エネルギー政策検討会の委員を務めているんですけれど、福島もその信州ネットに学びながらですね、ネットワーク型で、県が下支えをしながら、地域で自然エネルギーの担い手を育てながら進めていくっていう、そういう地域のエネルギー事業を県と連動しながら南相馬で立ち上げようとしています。山口県では、私の支援者の人たちが、今回の選挙を終わりではなく、始まりと考えてくれていて、選挙を通じて、本当にいろいろなものを得ることができましたから、山口県中で同じ方向性を見て私を支援してしてくださる人のご縁が何層にも分厚くできたので、それを足場にして、みなさんと一緒に、山口を変えていきましょうと。知事になっていたとすれば、できることはいろいろあったかもしれませんけど、逆に知事になったらできなくなることもあるし、知事にならなくてもできることがある、それをやっていく。たとえば、山口のエネルギー事業組合を作ってですね、みなさんと一気に自然エネルギー事業を立ち上げていくといったことも、これから始めようかという話をしています。(山口県知事選挙による革命は)起きるでしょう、革命と言っても、昔のような血を流すものではなくて、ふと気づいてみれば変わっていたねというもので。原発と違って、自然エネルギーのおもしろいのは、1年単位でいろいろなものが進んでいくことなんです。それも直線的は進化・変化ではなくて、スパイラルな形で進化していくんですよね。だから、今やることと来年とでは全然違って、来年と再来年とでは、また一段と違っているという、そういうスパイラルな形でどんどん進化しながら変わっていくところが、自然エネルギー、地域で人が中心となってやることのプロジェクトのおもしろさであり可能性であって、だから、ずっとこういうものに取り組んできましたけど、変革の積み重ねですし、それは10年20年30年というスケールで見据えた動きなんですよね。ふと気づくと、「あんた、まだちょんまげ付けてたの?」みたいな話になっていくという。みんなで血を流して、思考停止オヤジのちょんまげを切るんじゃなくて、まだちょんまげ付けているの、カッコ悪いよねー、という形で変わっていく。それで、ふと気付くと変わっていると、そういうものだと思いますね。』
いまわが国の国政の場では、有名無実化となっていた「原子力安全・保安院」を解体して、「原子力規制委員会」を新たに創設することにより、厳格で安全な基準が設けられようとしていました。しかし、その規制委員会人事について民主与党内の思惑の足並みが揃わないまま、裁量人事について野田総理への一任となった国会審議のなかでの「原子力発電」の問題。いま、囁かれている衆議院の年内解散についても「原発ゼロ」にむけてのエネルギー転換への政策実現というものが大きなテーマとなることは必至であると感じています。また、この総選挙に勝てるところは『原発のない町(選挙候補者あるいは政党)』なのだろうか?「政党・政策を越えて」日本のエネルギー転換を実現しようとするモノはまさに「虎の尾を踏む」ような勇気ある人間だけなのである、と思うなか、政治が揺れ、「論点・争点(イシュー)」が不明瞭になってきている政界にあって、その動向を左右することのできるモノは私たちの投じる「一票」にあると信じたい。「原発ゼロ」を訴えながら少しずつ歩を進めてきた、私たち日本国民の世論がそうしたように。
『現在、日本はほぼ「原発ゼロの国」である。それでも大きな問題はなく、電力は「供給」されている。本当に日本はすごい国だと思う。極端なことを言ってしまえば、2030年代とか言ってないで、このまま大飯原発を止めてしまえば、日本はいきなり原発ゼロになる。それは「可能」だと今の日本の現実が証明している。「政治的判断」さえあればできるのだ。他の原発の再稼働を止めているのは世論だし、大飯原発の停止を求める古賀(古賀茂明元経済産業省大臣官房付)さんたちの提言への支持も高い。つまり、そういう形で「政治は世論に追い込まれて」いくのである。山口県知事選に立候補した飯田哲也さんへの大きな支持も、敗れたとはいえ、「票」という形で顕在化したことで、既存の政治勢力に与えた影響は大きかった。これも選挙がなければできなかったことである。選挙という民主主義の基本システムをどう使うのか。それを今の日本は原発をテーマに学んでいる。きっと権力側の読みとしては、いずれ有権者は忘れ、原発問題は風化していくだろうと思っていたはずだ。しかし、そうはならなかった。それほどこのテーマは根深いのである』
本特集の「選挙で......」のうち、いまとなっては「有権者のこと」は権力側(国家を統治する政治家など)にとって、とても「大きなプレッシャー」になり、ひとつのムーヴメントを起こすかもしれないという「存在」になってきているということなのかもしれません。そのあたりのことを、過日、山口県知事選挙に立候補し、惜敗したものの「引っぺがし」がなければ、もしや...の結果もあったのでは、という環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏はこういいます。
『私が関わったものでは、長野県の阿部(守一)知事と、自然エネルギー信州ネットっていうネットワーク型の取り組みを1年前から始めました。地域ごとに協力しながら、それぞれの地域で自然エネルギーへの転換を進めていくというもので、ゼロ円ソーラーと言って、初期投資なしで太陽光発電を作るという、そういうモデルを始めようとしているんですが、だいぶうまく動き始めたっていうのがまずあって、それから、福島県では10年くらい福島県エネルギー政策検討会の委員を務めているんですけれど、福島もその信州ネットに学びながらですね、ネットワーク型で、県が下支えをしながら、地域で自然エネルギーの担い手を育てながら進めていくっていう、そういう地域のエネルギー事業を県と連動しながら南相馬で立ち上げようとしています。山口県では、私の支援者の人たちが、今回の選挙を終わりではなく、始まりと考えてくれていて、選挙を通じて、本当にいろいろなものを得ることができましたから、山口県中で同じ方向性を見て私を支援してしてくださる人のご縁が何層にも分厚くできたので、それを足場にして、みなさんと一緒に、山口を変えていきましょうと。知事になっていたとすれば、できることはいろいろあったかもしれませんけど、逆に知事になったらできなくなることもあるし、知事にならなくてもできることがある、それをやっていく。たとえば、山口のエネルギー事業組合を作ってですね、みなさんと一気に自然エネルギー事業を立ち上げていくといったことも、これから始めようかという話をしています。(山口県知事選挙による革命は)起きるでしょう、革命と言っても、昔のような血を流すものではなくて、ふと気づいてみれば変わっていたねというもので。原発と違って、自然エネルギーのおもしろいのは、1年単位でいろいろなものが進んでいくことなんです。それも直線的は進化・変化ではなくて、スパイラルな形で進化していくんですよね。だから、今やることと来年とでは全然違って、来年と再来年とでは、また一段と違っているという、そういうスパイラルな形でどんどん進化しながら変わっていくところが、自然エネルギー、地域で人が中心となってやることのプロジェクトのおもしろさであり可能性であって、だから、ずっとこういうものに取り組んできましたけど、変革の積み重ねですし、それは10年20年30年というスケールで見据えた動きなんですよね。ふと気づくと、「あんた、まだちょんまげ付けてたの?」みたいな話になっていくという。みんなで血を流して、思考停止オヤジのちょんまげを切るんじゃなくて、まだちょんまげ付けているの、カッコ悪いよねー、という形で変わっていく。それで、ふと気付くと変わっていると、そういうものだと思いますね。』
いまわが国の国政の場では、有名無実化となっていた「原子力安全・保安院」を解体して、「原子力規制委員会」を新たに創設することにより、厳格で安全な基準が設けられようとしていました。しかし、その規制委員会人事について民主与党内の思惑の足並みが揃わないまま、裁量人事について野田総理への一任となった国会審議のなかでの「原子力発電」の問題。いま、囁かれている衆議院の年内解散についても「原発ゼロ」にむけてのエネルギー転換への政策実現というものが大きなテーマとなることは必至であると感じています。また、この総選挙に勝てるところは『原発のない町(選挙候補者あるいは政党)』なのだろうか?「政党・政策を越えて」日本のエネルギー転換を実現しようとするモノはまさに「虎の尾を踏む」ような勇気ある人間だけなのである、と思うなか、政治が揺れ、「論点・争点(イシュー)」が不明瞭になってきている政界にあって、その動向を左右することのできるモノは私たちの投じる「一票」にあると信じたい。「原発ゼロ」を訴えながら少しずつ歩を進めてきた、私たち日本国民の世論がそうしたように。
(目次)
総力特集
選挙で原発を止める
脱原発には、日本の統治構造を変えなければならない
田中秀征
(民権塾主宰/元経済企画庁長官)
既存政党が掲げ始めた「原発ゼロ」は、どこまで嘘なのか?
古賀茂明
(元経済産業省大臣官房付/大阪府統合本部特別顧問/大阪府市エネルギー戦略会議座長代理)
1970年代に作られた原発はすべて廃炉にするべき
井野博満
(東京大学名誉教授/工学博士)
脱原発で選挙に勝てるのは、原発のない町だけだ
開沼博
(東京大学大学院学際情報学府博士課程/福島大学うつくしま・ふくしま未来支援センター特任研究員)
国会事故調はなぜ「この原発事故は人災である」と断言できたのか
田中三彦
(翻訳家/サイエンスライター/東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員)
「脱原発には経産省をぶっ潰さなければならない」
―「脱原発」を掲げて山口県知事選を闘って見えてきた今の政治意識のリアル
飯田哲也
(環境エネルギー政策研究所 所長)
「脱原発」は今最も効果の大きい経済政策である
小野善康
(大阪大学フェロー)
連載対談
「領土問題は国内問題である」
「そして、国境とか領土というものは、そもそも政治的幻想である」
内田樹×高橋源一郎
(哲学者・神戸女子学院大学名誉教授/武道家・凱風館館長)×(文芸評論家・作家/明治学院大学教授)
連載インタヴュー
竹島・尖閣諸島問題で
日本が国際世論を味方にする道はあるのか
藤原帰一
(国際政治学者/東京大学法学部・同大学院法学政治学研究科教授)
(参考)